物価高から庶民を救うはずの「補助金」が、実は物価を“無限大”に暴騰させる最悪の引き金になるという。大企業は値上げできるため株価は下がらないが、すべてのツケを払わされ地獄を見るのは消費者だけだ。(全2回の2回目/はじめから読む

【ポストイラン攻撃「世界のマネーの行き先」】欧州から見たイラン攻撃|日本の長期金利への影響は|続く円安傾向…有事の円買いが起きない理由|米国一強時代は終わるか|新興国に注目せよ【塚口直史】

(初出:「文藝春秋PLUS」2026年4月17日配信)

 中東有事などで物価が急騰すれば、政府は補助金を出し、財政支援で庶民を助けるべきだ。それは「当然の政策」ではないか――誰もがそう思うだろう。しかし、ヘッジファンドマネージャーの塚口直史氏(著書:『コロナショック後を生き残る日本と世界のシナリオ』すばる舎)は、その常識を静かに、鮮やかに覆してみせた。

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「財政を拡大して需要を無理やり増やそうとすると……理論的には無限大に価格が上がる結果になってしまう」

 政府が庶民を助けようとする行為が、なぜ物価を「無限大」に押し上げる罠になるのか? その恐るべきメカニズムの鍵は「モノの供給量」にある。

モノが「物理的に増やせない」とき、補助金は“燃料”になる

 イラン攻撃によってホルムズ海峡が封鎖され、原油の供給がストップした場合、事態は通常のインフレとは全く異なる様相を呈すると塚口氏は指摘する。

 通常、供給に問題が起きればモノの値段は上がる。しかし、ホルムズ封鎖のような「物理的な供給のストップ」が起きると、価格がどう動こうが供給量を一切増やせない「垂直」の状態に陥ってしまうのだという。

塚口直史氏

 真の恐怖はここからだ。この「モノが物理的に増やせない状態」に対して、政府が財政拡大や補助金の支出を行った場合どうなるか。

「需要を無理やり増やすと、理論的には無限大に価格が上がってしまう。社会的公正がものすごく毀損される形になる」

 物理的にモノが増やせない状況で、補助金という資金だけを市場にバラ撒けば、それは単なるインフレの「燃料」にしかならないという。