「『お前、やってみるか』ってフルハウスの社長に言われたときに『いやいや、これをイヤだなんていう奴はいないでしょう』みたいな感じだったんですよ。『こんな誰も行けないようなところになんで私が行けちゃうの?』みたいな感じ」

 この時点で何人かの元隊員から話を聞いていた私からすると、社長の「お前、やってみるか」にはそこそこ重たい行間があることがわかる。テレビ業界でも異端な存在の“探検隊”に送り出す意味を。秘境へ行く過酷なロケに耐えられるかどうか。特異な経歴のある人間が集ってくる『水曜スペシャル』という番組に耐えられるかどうか。

「そうですね。みんなあんまりまともな感じの人じゃない。自分も含めてね」

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 騎馬隊で鍛えられた若者にとって、慶應幼稚舎出身だらけの番組より雑草集団の探検隊のほうがハマる予感がしたのだろう。

「傷跡ありますよ」ワニと戦うシーン、まさかの裏側

 遮那が最初に参加した回は「原始猿人バーゴン」だった。私にとっても思い出深い回だったのですぐに話を向けると「バーゴンのときはもう。バーゴンのことは話していいかどうかは……」と遮那はいきなり口ごもった。どこまで話していいのかと逡巡している様子が見て取れた。

 そこで、バーゴン回がいかにやりすぎで異色だったかと語った恩田(光晴、「川口浩探検隊」元隊員)の話を振り、そのうえで視聴者だった私の「ワニと戦うシーンはすごかったですよねぇ」という感想を言ってみた。すると……。

「あっ、だから傷跡ありますよ、ワニを押さえましたよ」

※画像はイメージ ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 えっ!? こちらは当然驚くが、遮那のほうも「ワニと戦うシーンの裏話まで知っているのか」と驚いて、反射的に「傷跡ありますよ」と口に出たようである。

 遮那は我々に尋ねた。「これ、どこまでそういう話を聞いたんですか?」

 探検隊についてどの程度まで知っているかという逆質問。我々はこれまで聞いた話を具体的に説明した。しばらく聞いてから、遮那は早口に語りだした。

「いやいや、すごい回でしたよ。裸族の家族がいるわけですよ。そしたら、ディレクターが見てて、『なんかちょっと裸族だったら色が白すぎない?』みたいに言ったんですね。『ちょっと土か何か塗ろうよ』となって。家族の人にすみませんって謝って、自分がその裸族の裸の若い女の子に土で塗ってたっていうね。おばあさんにも塗りました。そういう記憶がありますねえ」

 そして「バーゴン回はね、いろいろ自分もやりましたよ、それは」。何かをさらに思い出したようだ。

 先ほどもそうだったが私は原始猿人バーゴンが川でワニと戦ったシーンについて聞きたくて仕方ない。つい、子どものような質問が口を出た。

──あのワニは本物だったんですか?

「もちろん本物。だから怖いですよ。現地のコーディネーターはもちろんいるけど、誰かが用意されたワニを現場まで運ぶ必要が出てくるわけですよね。動かすのは自分らですからね。そりゃ、怖いですよ」

──結構大きいワニでしたよね、あんなの動かせって言われてできるもんなんですか?

「それはもうこちらも命がけでやりましたよ。それが仕事ですから。やっぱり下っ端の人間がやるしかないから、じゃあ、やりますって。でも怖いですよね」

 小学生のような質問が続く。テレビで見た私の記憶が生々しくよみがえる。ワニすごかったですよね、あのワニ。

「それが、トラのときもあるんですよ」

 遮那も、小学生に秘密を教えるような表情で話し始めた。