野生のトラを担いで…プロ意識で乗り越えた絶体絶命の仕事

 トラが主役の回と言えば、「恐怖の人食い虎! スマトラ奥地密林に血に飢えた牙を追え!!」(82年12月8日放送)のことだ。

「そう、インドネシアで。これはもう本当に怖い。麻酔銃を撃って捕まえたんですよ。で、トラを神輿みたいなのに載せて持ち上げるんだけど、麻酔は15分しか効かないっていうんです。その間に撮影しないといけないから後ろを見ながらビクビクして。トラが起きてきたら大変だっていうんで」

──うわー、本当に危険じゃないですか!

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「はい、捕まえたのは本当の野生のトラです」

──それを人食いトラっていう設定にしたのですか?

「はい。人を見れば食っちゃうだろうと」

 人を食った話にも思えるが遮那は本気だ。野生のトラを捕獲したことは確かなのだから。馬を乗りこなした役者から転職し、川でワニを抱えてテレビデビュー戦を飾り、スマトラでトラを担いだ男。動物がついてまわる人生。

「一生の間にあのときだけじゃないですか、トラを担いだのは。絶対に日常ではないですよね」

※画像はイメージ ©rai/イメージマート

──危険な目に遭いそうだけど、俺がやらなきゃ…という気持ちになるんですか?

「まぁ、そうですね。言っちゃえばプロ意識ですよね、テレビマンとしては」

 スタントマンでも飼育員でもない、会社勤めのADの仕事。まったくの非日常の空間。しかし、非日常が当たり前の現場になると、その中で自分が何ができるかという意識になっていくのだろう。「僕がお茶を買いに行ってきます」と同じ感覚で「俺がワニを抱えます」というように。これは仕事論であるとともに、組織にいる人間が環境に順応していく過程を考えると怖い話でもある。極端な例でいえば、テロ組織にもこんな心理が働いているのだろうか。

 トラを担いだ遮那だが、他にもまだ担いだ動物がいた。マングースである。

「恐怖! 双頭の巨大怪蛇ゴーグ!」はヘビだらけの島に探検隊が乗り込むという回だが、本当に困ったときのヘビ対策として、籠に入れたマングースを背負う隊員がいた。それが遮那だったのだ。

「あんな大量のヘビがいるところでの撮影なんて、もう生きてる間にないでしょうけど、すごい体験だなと思いますよ」

 番組中盤の見せどころとして、マングース投入のシーンがやってきた。隊員の中でも目立つシーンだった。

「川口さんに、僕は映るのはしょうがないけど、名前だけは呼ばないでくださいとお願いしたんです。名前が“遮那”で珍しいから。視聴者に覚えられちゃうとちょっと気恥ずかしいからね。それを聞いた川口さんが逆にどんどん喋りかけてくるわけですよ。何かあるともう『遮那! マングースを出せ!』って(笑)。でも、それは心に響きましたねえ」

 ここまで動物に縁のある遮那だったが、物理的なダメージというのはワニと格闘したときの傷以外にもあるのだろうか。