なぜ女性たちを騙せたのか?

 以降も犯行は続き、4月18日には伊勢崎市の高校生、川端成子さん(同17歳)、27日は前橋市の高校生、佐藤明美さん(同16歳)、5月3日に伊勢崎市に住む電電公社(現・NTT)職員の川保和代さん(同18歳)、9日に藤岡市の会社事務員の竹村礼子さん(同21歳)、10日に前橋市に住む家事手伝いの鷹觜直子さん(同21歳)が強姦後に絞殺、道路や畑に掘った穴に遺体を捨てられる。

 まさに鬼畜の所業だが、特筆すべきは、犠牲者の大半が見知らぬ相手にいきなり襲われたのではなく、それまで少なくとも1回、多い場合は7回も大久保に会っていた点だ。皆、スポーツカーに乗ったインテリ風で、話題も豊富な男に最初は油断したようだ。

 そして、犠牲者が身内に警察・検察関係者がいることを口にしたことが殺害の直接の動機になっている点にも注目したい。後の大久保の供述によれば、8人のうち5人に警察官や検察官の身内がおり、他の2人は大久保が刑務所帰りであることを事前に知っていたという。

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 逮捕は偶然だった。最後の犠牲者の遺体が発見された1971年5月10日午前1時半ごろ、藤岡警察署に1本の電話が入った。竹村を名乗る男性は「私の妹の礼子が、昨日夕方6時ごろ出かけたまま、この時間になっても帰らないのですが、市内のどこかで、女の子が被害に遭った交通事故はなかったでしょうか」と問い合わせてきた。

 当直員は「そのような事故は発生していません」と返答。その後、管内の派出所勤務員に手配してパトカーで管内警らを実施、2時間捜索したものの礼子さんは見つからなかった。

 一方、電話をした兄がその後、一睡もせず必死になって藤岡市内の捜索を続けていたところ、10日午前6時半ころ、市内宮元町の多野信用金庫の駐車場の隅に妹・礼子さんが乗っていた自転車が放置されているのを発見した。不審に感じた兄がしばらく見張っていると、午前9時半ころ、マツダの車を運転してきた男が両手に軍手をはめて、自転車に近寄り指紋を消すような動作を始めた。大久保清だった。