一家7人が斧で惨殺された凶悪事件――戦後の混乱と食糧難のなか、捜査はなぜ行き詰まったのか。

 長野の寒村で起きた凄惨な大量殺人は、やがて村人同士の疑心暗鬼を招き、冤罪寸前の混乱へと発展していく。事件のその後を、鉄人社の文庫新刊『戦後まもない日本で起きた30の怖い事件』よりお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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食糧難で捜査は縮小

 一方、盗まれた玄米4俵は、現場から約300メートル離れたサツマイモ貯蔵用の洞穴の中に隠してあるのが見つかった。

 米俵にはわずかながら血痕が付着していたことなどから、警察はこれらを被害品と断定。犯人が必ず米を取りに戻ってくるものとみて、洞穴の所有者に口止めしたうえで極秘に捜査員を張り込ませたが、犯人が姿を見せることはなかった。

 また、この洞穴がこれまで何度もサツマイモ盗難の被害に遭っていたことから、警察は盗難の現行犯で逮捕された者を中心に身辺調査を実施したが、いずれも本事件とは無関係と判明している。

 長野県警刑事課と所轄の飯田署は現場近くの瑠璃寺に捜査本部を設置、延べ8千人に及ぶ捜査員を導入し犯人を追った。が、極度の食糧難から十分な捜査活動は実現せず、事件発生からわずか3ヶ月で捜査体制の縮小を余儀なくされる。