元気でいるための努力を惜しまない

 ほとんど、作ったことのない料理を始めたのも90歳を超えてからです。思い返してみると子供の頃も、母の手料理を食べた記憶がありません。普段はお手伝いさんがやってくれましたし、戦争が始まってからはそれどころではありませんでした。

 料理に目覚めた母は、新聞などの料理記事を切り取っては冷蔵庫に貼って作っていました。もちろん、食べるのは私たち姉妹。

 一番、印象に残っているのは肉じゃがです。「肉じゃがを作ったから食べにきて」と例のチラシ裏に書かれたメモが入っていました。母の部屋に行くと、肉じゃがの“ようなもの”が、テーブルに並べられているのです。レシピをそのまま作るのも癪だから、と冷蔵庫の中に残っている食材を入れて、「いいアイディアでしょ」などと自慢するのですが、実は残り物がもったいないのです。母曰く「冷蔵庫に入っていたから大丈夫よ」だそうです。体調のことを考えるとそうも言っていられません。その日から、妹が冷蔵庫を調べて、あまりに古い食材は捨てていました。

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 よく母の長寿の秘訣を聞かれるのですが、気の持ち方が大きかったと思います。母はいつまでも綺麗でいたいと考えていました。

 自分の容姿を気にしていて、色も黒くて美人ではないとコンプレックスを持っていたようです。ある時、「鶯の糞が肌にいい」と、どこからか聞いてきて、「あなたも使いなさい」と渡してくれたことがあります。

写真はイメージ ©getty

 手で揉んで顔に塗るのですが、90歳を越えた母が「これで少しは綺麗になれる」といいながら、鏡に向かっていたことをよく覚えています。