「心配で死ねないわよ」

 私が楽しく明るく振る舞っていると、「無理しなくていいわよ」などと見透かしたことを言う母です。私自身も歳ですし、残っているエネルギーを吸い取られながら介護をしていました。

 一方で、私が顔を出すと母もホッとしているようでした。

「あなたがいるから私は生きていけるんだけど、私が死んだらあなたはどうするのかと思うと心配で死ねないわよ」と言われました。

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 そんなに心配してくれるなら、まずこの生活を終わらせてほしい、と少し意地の悪いことを考えてしまう自分もいました。それでも、母を支えるのは私だけなのだ、と自分を鼓舞して日々を過ごしていました。

目覚めると、ひとりだと気づく 家族が過ごした最期の日々 (文春新書 1525)

阿川 佐和子 ,加賀 乙彦 ,小池 真理子 ,曽野 綾子 ,永田 和宏 ,眉村 卓 ,柳田 邦男 ,吉行 和子

文藝春秋

2026年4月17日 発売

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