誰もが等しく経験する最愛の人との別れ――かけがえのない家族の死とどのように向き合い、悲しみから始まる新たな人生を過ごしているのか。

 ここでは107歳まで生きた母・吉行あぐりさんを看取った女優・吉行和子さん(2025年逝去)の思い出を紹介。90歳から始まった“第二の人生”が始まった母となぜメキシコ旅行に?

 月刊「文藝春秋」に掲載された魂の記録を1冊にまとめた新書『目覚めると、ひとりだと気づく 家族が過ごした最期の日々』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/続きを読む

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吉行和子さん ©文藝春秋

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母・吉行あぐりの最期

 母が亡くなって、いつの間にか1年の月日が過ぎてしまいました。生きている頃は1日に何度か、同じマンションにある部屋を訪ね、様子を見ることが私の生活の一部でした。100歳目前までは元気そのもの。こうやって年を取るのは素晴らしいことだな、と感じていました。

 しかし、寝たきりになってからは、不満一つ表に出さず我慢をしながら生きていました。それを見ているのはとても辛く、私にとって修行のような時間でした。母にしても、寝たきり状態で人に迷惑をかけながら生きていたくない、早く終わりたいと思っていたはずです。平成27(2015)年の1月5日に亡くなったとき、悲しさよりも何よりも「終わってよかったね」と、母に声をかけてあげたい気持ちになりました。

 吉行あぐりは、明治40(1907)年生まれ。作家・吉行エイスケと結婚し、一男二女に恵まれる。長男は作家の吉行淳之介(平成6年没)、長女が和子、次女が作家の吉行理恵(平成18年没)。エイスケの死後、再婚している。

 あぐりは、美容師として活躍し、昭和4(1929)年、山ノ手美容院、戦後は吉行あぐり美容室を開き、97歳まで現役として働いた。その半生は、NHK朝の連続テレビ小説「あぐり」のモデルともなる。平成27年1月5日死去。享年107。