初の週刊連載は「サッカー」がテーマだった
名だたるマンガ家の助太刀をしていた森川さんに再びチャンスが訪れたのは1986年、20歳になる年だ。週刊少年マガジンでサッカーマンガ『一矢NOW』の連載がスタートした。森川さんといえばボクシングというイメージがあり、サッカーは意外だ。なぜサッカーをテーマに選んだのだろうか?
「各少年誌に『どのジャンルのマンガを読みたいですか?』というアンケートがあって、当時、モータースポーツ、格闘技と並んで必ずベスト3に入っているのが球技でした。自分は学生時代、バレーボール部だったけど、球技のなかではサッカーが好きだったんです」
週刊誌の連載には、アシスタントが必要だ。でも、それまでアシスタントを使ったことがないから、勝手がわからない。「年上は緊張するな……」と思い、担当編集者に「できれば同い年か年下でお願いします」と頼んだ。その際に紹介されたのが、当時、江古田に住んでいた森川さん宅のすぐ近くにある日本大学芸術学部に通っていた青年だった。同じ1966年生まれで、学年では森川さんのひとつ下になる。
初日、実力がわからないまま、「こんな感じで」と『一矢NOW』に出てくる学校の絵を頼んだ。その「線」を見て、息をのんだ。
「すごい人が来た……」
アシスタント先で数えきれないほどの「線」を見てきた森川さんは、「生きた線」か「機械的な死んだ線」か、見分けられるようになっていた。生きた線を描ける人はそういない。
「もう手伝わなくていいよ。君の話を聞かせて」
その学生は、自分のスケッチブックを開いて、まだタイトルも決まっていないというマンガの原案について話した。そこに描かれている絵を見て、「彼は天才だ。今の段階でこのレベルなら、10年後、大変なことになる」と確信した森川さんは、自分のマンガに集中するように伝えた。
「いつかこれを描きたいんで、力をつけます」と語っていた学生の名は、三浦建太郎さん。三浦さんが『ベルセルク』の連載を始めるのは、奇しくも森川さんが『はじめの一歩』の連載を始めたのと同じ1989年だった。
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