「また打ち切りだろう」→50週連続で「人気1位」の大ヒットに 

『はじめの一歩』は、母子家庭のいじめられっ子、幕之内一歩がひょんなことから、鴨川ボクシングジムに入門。ジムの会長、同門の仲間や国内外のライバルたちとの出会いを通じて、「強いとはなにか?」という問いの答えを追い求めるストーリーだ。

 1989年10月、週刊少年マガジン43号で幕之内一歩が表紙を飾り、初回を迎える。60ページで掲載された「Round1/The First Step」は、一歩が同級生から暴行を受けているところに鴨川ボクシングジムのボクサー、鷹村守が通りがかるシーンから始まる。

 あらためてこの第1話を読むと、「強いってどんなんだろう」「強いって一体どんな気持ちですか?」というセリフが出てくる。ここに、いくらネームを描いてもうまくいかなかった時、ちばてつやのマンガを読んで「マンガがうまいってどういうことだろう」と思い悩んでいた森川さんの気持ちが表れている気がした。

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 主要な人物は一歩と鷹村、一歩の母親しか出ていない1話目の反響は、森川さんにとって「予想外」だった。

「読者アンケートで1位でした。相当シンプルな内容なんですよね。読者に受けた理由は、ぜんぜんわからないです。それまでの3作となにが変わったのかも、わかりません」

人気1位というスタートを切るも、森川さんは「読者に受けた理由は、ぜんぜんわからないです」と振り返る ©石川啓次/文藝春秋

 このままロケットスタート!……とはならない。2話目の読者アンケートは、7位。連載の2回目に順位が下がるのはよくあることだが、1位から7位という幅が大きかった。

「今回もこれか……。これからずっと下がるんだろうな。また打ち切りだろうな」

 森川さんは悔しがったり、悲しんだりするのではなく、この結果を淡々と受け止めた。順位が落ちても、締め切りは来る。連載終了を告げられるまで、プロとして仕事を続けるだけだ。

 幸い、森川さんの予感は外れた。間もなくして再び読者アンケート1位に返り咲くと、それから50週、60週と連続でトップに立つ。森川さんは当時を「なにが起きているのか、よくわからなかった」と振り返る。