『サンキュー、チャック』

 これも、宣伝されている内容からは映画の中身が掴みにくい作品だ。それどころか、観始めてしばらくしてからも、「?」が続く。が、これも最後には大きな感動がやってくる。

 物語は、天変地異の連続で人類全体が滅亡へ向かっていく状況下から始まる。だからといって大災害のスペクタクル映像があるわけではない。アメリカの田舎町を舞台に、人々がこの状況を受け入れざるを得ない中での日常が映し出される。ところが、文明の終末が近くなるにつれ、謎の銀行員風の中年男が大きく写った看板やCMが町やテレビで増えていく。そこには「サンキュー、チャック」「素晴らしい39年に」というコピーが書かれていた。

『サンキュー、チャック』

 実はこの作品、3章構成から成っている。第1章が、上記の内容だ。そして第2章は時間が遡る。この「チャック」が出張先の街角でストリートミュージシャンを相手に華麗なダンスを披露するという内容。第3章はさらに遡り、若き日のチャックがダンスの悦びに目覚める過程が描かれている。

ADVERTISEMENT

 明らかに浮いているのが、第1章だ。これさえなければ、1人の人間の短い半生を描いたウェルメイドなドラマとして成り立っている。だが、よく目を凝らして観て欲しい。2章も3章も、そこかしこに1章に繋がる要素がちりばめられている。そして、その断片から「1章って、もしかして――」という予感が持ち上がってくる。

 最後まで、第1章の解釈が明確に明かされることはない。だが、そうした断片の積み重ねから見えてくる1章の真相と、その結果として「サンキュー、チャック」というコピーが「誰が誰に向けて発している言葉なのか」が伝わってきたとき、たまらない感動がこみ上げてくることに。

 1回目は「?」を追いかけながらの観賞となるため、ぜひ2回目も観て欲しい。全てを理解した上で観ると、1度目は不気味な背景でしかなかったあの看板が、とてもエモーショナルに映るはずだ。

『サンキュー、チャック』
原作:スティーヴン・キング/監督・脚本:マイク・フラナガン/出演:トム・ヒドルストン、キウェテル・イジョフォー、カレン・ギラン、ジェイコブ・トレンブレイ、マーク・ハミル/2024年/アメリカ/111分/配給:ギャガ、松竹/© 2024 DANCE ANYWAY, LLC. ALL RIGHTS RESERVED./全国上映中