事故時の記憶はなく、気付いたら車が大破していた

 古い記憶なら覚えているというが、近くの記憶があまりないという被告人。記憶障害を診断された際の記憶は思い起こせるものの、それ以降があまり答えられない。「覚えていない」、「(発作は)あったそうです」、「(病院に)行ってると思うが、あまり記憶はない」、「(てんかんと)家族に言われていたので、そう思っている」などと曖昧な供述が続く。

 運転について医師から禁止されていたはずだが、「なるべくしないようにと」、「『絶対に乗るな』と言われた認識はない」とし、家族からは「乗るな」と言われていたと答えていく被告人。事故発生日、車に乗ってしまった理由については「助言を忘れていた」、「何も考えず、無意識で」と答えた。

 事故時の記憶もない。気が付いたら自身が乗車している車が大破しており、周囲から事故を告げられた。

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「若いのに、私のせいで……」と涙を流した被告人は事故後、毎日現場に足を運び、手を合わせているという。事故をした記憶、その思いを忘れないよう今では日記をつけている。

検察官は「危険で悪質」、代理人弁護士も「病気よりも態度によるもの」と厳しく指摘

 遺族の思いを受けた代理人弁護士からは終始厳しい口調で質問がされた。

 事故後、身柄勾留された被告人は保釈されたのち、遺族から連絡を受けて謝罪に赴いたことがあったという。その際「1人では来ないように」と伝えられていながらも1人で行ってしまった。この件について代理人弁護士から問われると「言われてないと思う。言われてたら1人で行かない」と答えた。

 裁判官は被告人の事情を鑑み、丁寧に言葉を選びながら質問を続けた。遺族への向き合い方を質問すると、「(遺族と)近すぎるのもどうかと思うので……」と答えた被告人に対して、「何ができるか真剣に考えてください」と伝えて質問を締めた。

 検察官は、てんかんの認識があり複数回発作を起こす中で、緊急性のない長距離の運転は危険で悪質と評価。被害者に落ち度はなく、同種事案に対する一般予防の見地からも厳重に処罰すべきとして、禁錮3年を求刑した。

 被害者代理人弁護士は、診断も受けて家族からも注意されながらも、運転免許更新時に虚偽を記載するなどの行為は、過失でなく故意に近いものと指摘した。仕事ではメモをしながら、日常の危険についてはメモを行わないなど、事故の評価は病気によって減退させるものでなく、人格的態度によるものと厳しく非難。執行猶予は相当でないとして、懲役4年が相当であると意見した。