被告人の弁護人は、発作によって起きた事故であり、悪意があって指導を無視した事案と異なると主張。受刑でなく、治療等により被害者の冥福を願うことが相当であるとして、寛大な判決を求めた。

 被害者の母は意見陳述(弁護人代読)にて、被告人が法廷で謝罪の意向を示しながらも「公判中遺族の方に目を向けない」、「一周忌に連絡もしない」といった態度を見せていることに怒りの感情を示し、「息子はなぜ死ななければならなかったのか。被告人に運転をやめさせるために死んだのか」、「裁判官にお願いです。遺族が前を向いて生きていけるよう、前例に捉われず判決を」とその思いを告げた。

被害者の母は「あんたが殺したんや」と泣き崩れ……

 判決は禁錮3年、執行猶予5年であった。理由として、裁判官は「本来防げる事故」と評価し、鍵の保管や車の処分など、その注意が十分でなかったと指摘。その指摘の対象は家族にまで及んだ。一方的な過失で、危険な行為によって起きたあまりに重大な結果と評価している。

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 しかし、医師の指導もありながら記憶に留めることが困難であった側面は否定できず、その過失を認知症等がない者と同等に非難することはできないとした。また、十分とは言えないものの、謝罪の意思や保険による対応、車の処分などを行っていることから執行猶予の判断をしたことを告げた。

 裁判官が退廷してもなお、法廷に重苦しい雰囲気は残っていた。そんな中、被告人と遺族が接触を持たないよう、被告人が先行して退廷のため立ち上がったときのことだ。

 被害者の母が立ち上がり、被告人に近づいた。被告人の顔面に遺影を突き出して「この人殺し! あんたが殺したんや」と涙ながらに声を発する。その後、母は傍聴席にいた被告人の妻に近づき「あんたがちゃんと見ていれば……」と述べると、その後の言葉は続けられなかった。

 被告人と妻は、下を向きながら謝罪の言葉を続けた。被告人の弁護人や被害者の父親・兄弟が間に入ったが、それ以外の人物はその様子を静かに見届けることしかできなかった。

 時に、てんかんが原因と思われる交通事故は、大きな批判や病に対する偏見を招きやすい。しかし、実際に事故となるケースは、守られるべき事項が遵守されていない場合に起きることが多い。同様の症状を持つ人の大半は、病気と適切な向き合い方をしている。

 当記事が、「このくらいなら」と安易な気持ちで行われる運転行為とその結果生まれる事故を1件でも減らすこと、そして病に対する偏見を助長しないことを願う。

最初から記事を読む 「運転禁止」医師に言われながらも運転→てんかん発作で意識を失い死亡事故…家族も黙認の末に起きた“悲惨事故”の一部始終

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