迷ってしまう商業施設…?

 現地に到着すると、その異様な外観に圧倒される。真っ赤な外壁、青や緑の縞模様、そして何より目を引くのが、有機的にうねる「曲線」だ。

曲線が目立つキャナルシティの建築デザイン

 設計を手掛けたのは、六本木ヒルズやなんばパークスなどもデザインしたアメリカの建築家、故ジョン・ジャーディ氏。彼はこの場所に、“キャナル”という言葉通り“運河”を引き込み、自然界の要素(星、月、太陽、地球、海)を表現したという色彩のグラデーションを施した。

館内を運河が流れる

 館内に足を踏み入れると、現在自分が何階のどこにいるのか、方向感覚が徐々に奪われていく感覚を覚える。一直線に見通せる通路はほとんどなく、先が見えないカーブを曲がるたびに新しい景色が現れる。目的の店への行きやすさ、すなわち“効率”とは真逆の設計といえる。

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今いる場所が何階なのかわからなくなる感覚。写真を撮影したのは地下1階だ

 2018年7月11日付の産経新聞によると、ジャーディ氏に設計を依頼したのは、福岡地所の藤賢一氏(現株式会社CCD JAPAN代表取締役)だった。きっかけとなったのは1枚の写真。ジャーディ氏がデザインしたカリフォルニア州サンディエゴのショッピングセンター「ホートンプラザ」だった。

キャナルシティ博多を設計したジョン・ジャーディ氏によるサンディエゴのショッピングセンター「ホートンプラザ」 ©getty

 ジャーディ氏の建築哲学は「人はまっすぐに歩かない」。そこに人は散策の楽しさを見出すというものだった。

傑出した何かがあるわけではない…なのになぜ?

 たしかに、建築としては非常にユニークで歴史的な意義も深い。しかし、テナントに目を向けてみると、GAPや無印良品、ニトリといったおなじみのブランドが並ぶ。もちろん、全国の有名ラーメン店が集まる「ラーメンスタジアム」や、スポーツ用品の「Alpen FUKUOKA」、ガンプラを主体とした総合施設「ガンダムベース」など、インバウンドに刺さる強力なコンテンツは揃っている。

中洲側から見たキャナルシティ博多外観

 それでも、東京や大阪の巨大商業施設と比べて「キャナルでしか体験できない傑出した何か」があるかと言われると、首を傾げてしまうのも事実だ。それにもかかわらず、なぜ日本一海外観光客の注目を集める施設に選ばれたのか。

日本にいるとは思えないデザインだ

 その理由のヒントは、「時間消費型施設」という開業当初からのコンセプトと、博多という都市のコンパクトさにある。

 福岡は、直航便が充実するアジア各都市からのアクセスが抜群に良い。空港から地下鉄で十数分で中心街に到着し、キャナルシティ博多周辺に観光、グルメ、ショッピングがぎゅっと凝縮されている。団体客の行動を管理しやすい施設規模と構造も、旅行会社のツアールートに組み込まれやすい要因となっているのだ。

韓国の旅行サイトでも福岡観光のツアーにキャナルシティ博多がパッケージングされているケースはとても多い(画像はMyrealtripより)

 さらに、キャナルシティ博多では韓国最大のカード会社「新韓カード」が発行する韓国内専用クレジットカードが使えるよう決済システムを整えたり、一括で免税手続きができるグローバルタックスフリーカウンターでは、現金だけでなく韓国で普及している「Naver Pay」での還付も選択できる取り組みを一早く始めていた。