なぜスーパーは「鮮魚売り場」を縮小させてきたのか
魚は、販売するのが難しい商品だ。青果や精肉と比べると、日々の品質管理に手間がかかる。また、鮮度が落ちるスピードが早く、ロス(廃棄)も出やすいため管理方法を誤ればもろに利益を直撃する。
そのため、画一化された大手チェーンでは、取扱量や品目を減らしたり、鮮魚よりも管理が楽な干物を増やしたりと、工夫を凝らしてきた。昔ながらの対面販売の売り場を、シンプルな陳列棚に変えるという、合理的な判断が繰り返されてきたのである。
だが、その積み重ねは、次第に鮮魚売り場の魅力を静かに奪っていった。品揃えが減れば、訴求力が失われる。すると、さらに魚が売れなくなり、段々と売り場を縮小させる——この悪循環が、全国で進行してきたのだと考えられる。
「売る側が『効率を優先させた』結果、消費者が魚を手に取る機会が徐々に失われているのではないか」
鶴見さんは業界全体の構造を、このように俯瞰している。では、同社はなぜ管理に手間がかかり、一つ間違えば利益を一気に失う恐れがある魚のみで、商売を続けられているのか。その鍵は、「ロスを極限まで減らす仕組み」と「独自の仕入れ体制」にあった。
ロスを出さない「角上ならでは」の構造とは?
全国のスーパーにおける水産部門のロス率は、平均で1.8%とされている(2025年版「スーパーマーケット年次統計調査」による)。角上魚類の全店平均は、これを大きく下回る数値を記録している(詳細は非公表)。その理由は、「段階的に加工する仕組み」にある。
同社では丸魚(加工される前の1匹丸ごとの状態)が売れ残りそうになると、折を見て刺身や寿司、惣菜へとバックヤードで加工を行う。時間帯や客層、その日の売れ行きによっても販売方法を変えることで、ロスを限りなくゼロに近づけているのだ。
「魚の鮮度が高いうちに売り切ればロスを減らせるし、次に入荷した魚をすぐに売り場へ並べられます。すると、常に鮮度のいい魚しか、店頭に並んでいない状態にできるんです。加えて、売れれば売れるほど大量の仕入れができるようになるので、圧倒的な品揃えが生まれる、というわけです。実は、買っていただいているお客様によって、鮮度が維持されているんですよね」と常務取締役の吉田努さん(商品企画本部 本部長 )は説明する。
スーパーが「非効率的」として切り捨ててきた部分を、角上魚類では1つの大きな連鎖として設計してきたことで乗り越え、かつ魅力を高めるきっかけとしてきたわけだ。

