そのスマートフォンとの融合に踏み込めなかったのがカメラ業界です。キヤノン、ニコン、オリンパスなどは世界最高のレンズ技術を持っているにもかかわらず、「スマホのカメラはおもちゃみたいなもの」としか認識できず、カメラの通信端末化に乗り遅れました。かれらが重視していたコンパクトカメラ市場は壊滅的な状態になり、スマートフォン企業に敗北することになったのです。

また、NTTは90年代にインターネットの世界標準に乗り遅れました。ISDNの推進に固執して、ADSLや光回線の導入が遅れたのです。社内には世界最先端の技術者がいたにもかかわらず、それを活かすことができませんでした。

このような例は、枚挙にいとまがありません。日本企業は「前頭葉バカ」が多数派を占めたことで、思い切った方向転換や新規事業への進出といったチャレンジができなくなってしまいました。経済の低迷で「失われた30年」になってしまったのも当然です。

和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、40年にわたり高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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