でも、Cさんは認知バイアスを刺激するアプローチを連発されると、直感的な判断をしてしまうのです。自分が手にした情報だけで判断したくなる心理(利用可能性バイアス)や自分の都合のいい情報ばかりが目に入る心理(確証バイアス)が働き、注意深く調べたり、じっくり判断したりする手間を面倒くさがるようになり、Dスクールしか目に入らなくなりました。
CさんはDスクールに通い始めてからも違和感を覚えましたが、「ここでやめると今まで払った受講料が無駄になる」といった心理(サンクコストバイアス)が働き、引き返せなくなりました。
Cさんにとって「限られた時間で高いスキルを習得できるか」が目的のはずだったのに、「今まで払ったコストを無駄にしたくない」という動機のほうが強くなってしまったようです。
さらに、DスクールではCさんがこの状態になったのを見越して「今だけ」「あなただけ」「内緒ですよ」といった特別感を与えるようなメッセージを送りました。
こんな殺し文句を言われたCさんは「限定バイアス」が刺激され、さらに「今、申し込まないと損をする」という心理状態(損失回避バイアス)になり、焦って追加申し込みをしたくなったのです。
行動経済学では固く禁じられた手口
このように認知バイアスを刺激し本人の意に反した行動へと仕向ける手口は「ナッジの悪用(=スラッジ)」であり、行動経済学では固く禁じられています。
一方、悪質業者は行動経済学の崇高な理念などお構いなしに、ナッジの悪用を使いまくっています。これでは消費者はひとたまりもありません。
かと言って、全部を疑いの目でチェックしようとすると、理性がフル出勤し、すぐに疲れ果ててしまいます。
これに対しては被害防止の仕組みを自分で作っておくナッジを設計しておくと安心です。具体的には、自分の行動が監視される状況を作ること(モニタリングナッジ)で、望ましい行動を取りやすくなります。
たとえば、「28歳女子、クリエイターへの道」といったブログを開設してみてはいかがでしょうか。他人から見られていると、決断する前にじっくり調べる動機が生まれます。