ヒットの兆し

 初代ポケモンの発売日は、1996年の2月27日。その翌日、2月28日に発売された『別冊コロコロコミック』4月号から、「ポケモン」の1番最初のコミカライズ作品『ふしぎポケモン ピッピ』(穴久保幸作 作)の連載がスタートしました。

 当然、メーカー側との事前協議はあったはずですが、今ほどしっかりした監修や世界観の共有が前提ではない時代のことでもあり、かなりマンガオリジナルのニュアンスが濃い作品になっています。この作品では、主人公にあたるポケモンもピカチュウではなくピッピで、ピカチュウは今の感覚ではあり得ないような下ネタを演じたりしています。

 このマンガの初回のアンケート結果は「そこそこ」程度だったそうですが、ポケモンの発売から1カ月、2カ月と経つうちに、子どもたちの間で『ポケモン』に関する口コミが広がっていきました。その話題の中心となっていたのが「幻のポケモン」の噂です。

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 初代『ポケモン』は、当時のTVCMでも「150匹のモンスター」が登場すると宣伝されていましたが、実はゲーム内のデータとしては151匹目のポケモン「ミュウ」が存在していました。これは開発段階でスタッフが内輪の「お遊び」として仕込んでいたキャラクターで、宣伝目的などは全く無く、本当にユーザーの目には触れない予定の隠しデータでした。そういう意味で、現在よくあるプロモーション用に意図的に仕込まれた「隠し要素」とは全く性質の異なるものです。

 ところがこのミュウが、バグが原因となって子どもたちのゲームに出現してしまいました。ミュウはもともとデータとしてはちゃんと存在しているポケモンなので、出現自体は想定外のバグであっても、一度出現してしまえば保存もでき、通信ケーブルを介して他のプレイヤーと交換もできてしまうのです。

 そうなると、日本全国でまれに現れる「ミュウを持っているプレイヤー」が噂になり、交換でミュウを手に入れた子どもがまたさらにそれを友達に自慢し、交換して、噂が噂を呼んでいきます。

 いわば一種の都市伝説のように、ミュウの噂とともにポケモンというゲーム自体の認知度がどんどん上がっていきました。