「え、私がスカーレット!?」

 作家の蝉谷めぐ実さんは、「風と共に去りぬ」に挑むにあたり、大いに戸惑った。執筆ではない。人気作家が役者として舞台に立つ「文士劇」で、主人公スカーレット・オハラを演じることになったからだ。

「中学高校で演劇部でしたが、世界的な名作に出演することは初めてでしたし、様々な役柄になって台本を読み合わせているうちに、スカーレット役に決まったことにも驚きました」

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蝉谷めぐ実さん

『風と共に去りぬ』は、1860年代、南北戦争前後のアメリカ南部を舞台に、明るく気性の激しい女性スカーレット・オハラが、愛と挫折、戦争による苦難を乗り越えながら懸命に生き抜く姿を描いた長編小説。本舞台では、蝉谷さん、綿矢りささん、辛酸なめ子さん、村山由佳さんの4人の作家が世代を分けてスカーレットを演じていく。

「観客の皆さんそれぞれに自分なりのスカーレット・オハラがいると思いますので、プレッシャーはありますが、こういうスカーレットがいてもいいよねと思っていただけたら」

 スカーレットは、同じ上流階級の貴公子アシュリ(阿部公彦)に恋心を打ち明けるが、彼には婚約者メラニー(山内マリコ)がいた。そこに現れるのが、社交界の鼻つまみ者のレット・バトラー(島田雅彦)。

「振られたスカーレットは水差しを投げ割り、それをバトラーに見られて狼狽えます。そこが可愛らしいと感じて、ツンとしてそっぽを向くような演技をしたら、演出の五戸(真理枝)さんが、『もっと挑む感じで。バトラーに向かって』と仰って。男性に対しても対等に挑むような強さを持った女性なのですね」

 演劇経験者ゆえの“癖”にも演出が入った。

「つい観客の方を向いて演じてしまうのですが、『感情の向く先はアシュリ、そしてバトラー。彼らから視線を途切れさせないでください』と五戸さん。それがスカーレットの真っ直ぐさなのだ、と解釈しています」

日本文藝家協会創立100周年記念 文士劇「風と共に去りぬ」
5月23日、24日/紀伊國屋書店 紀伊國屋ホール

 全編の翻訳を担当した鴻巣友季子さんは「なぜ、いま『風と共に去りぬ』なのか?」と、その問題意識を記している。

〈マーガレット・ミッチェルの書いたこの大河小説がじつは映画版とはほとんど正反対の世界観を持っていることはあまり知られていません〉

「白人に使役される黒人奴隷が存在し、無益な戦争が起きた。現代の価値観に合わないからとそれらを隠すのではなく、舞台を通じて真摯に向き合うために、演出、出演者みんなで知恵を出し合っています」

「演劇素人の作家だから大目に見てほしいという甘えはない。発声練習から取り組みました」と話す眼差しは真剣そのもの。ただ共演者の事に水を向けると、「作家に憧れていた私は、ミーハー心をくすぐられっ放しです」と途端に相好を崩す。

「だって、隣に綿矢りさがいるんですよ!(笑)。ハキハキ溌溂と演じる綿矢さん、隙あらば笑わそうとしてくる岩井志麻子さん、早々とセリフを入れて颯爽とした島田雅彦さん……間近に見ることができて、参加して本当によかったです。その場限りの特別な舞台を楽しんでほしいです」

せみたにめぐみ/1992年、大阪府生まれ。2020年『化け者心中』で作家デビュー。22年刊の『おんなの女房』で野村胡堂文学賞、吉川英治文学新人賞、24年『万両役者の扇』で山田風太郎賞、26年『見えるか保己一』で山本周五郎賞を受賞した。

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日本文藝家協会創立100周年記念 文士劇「風と共に去りぬ」
5月23日(土)、24日(日)
紀伊國屋書店 紀伊國屋ホール
https://sunrisetokyo.com/detail/33760/

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