国家のGNPの99%を戦争に注ぎ込む――。太平洋戦争末期、日本が記録したこの異常な数字の裏には、他国が決してやらなかった「巧妙な借金のカラクリ」が存在した。そして敗戦の裏で大蔵省が仕掛けたのは、極限のマネーゲームだった。(全2回の1回目)
(初出:「文藝春秋PLUS」2026年4月23日配信)
昭和19年度の日本の戦費は735億円。対してその年の日本のGNPは745億円。日本が生み出した付加価値のほぼ99%が戦争に費やされた計算になる。この数字を耳にすれば、誰もが絶句するだろう。
しかし、文藝春秋PLUSの番組「+HISTORY」に登場した防衛研究所主任研究官・小野圭司氏は、著書『太平洋戦争と銀行』(講談社現代新書)をもとに、軍事史の「金融という死角」に隠された仕掛けを明かした。
「日本が生み出した富のうち、戦争に使われたのは…」
小野氏はこの数字のトリックを解き明かす。 「『GNPの99%が戦費』と聞くと、国内のすべての富を戦争に注ぎ込んだように思えますが、実態は違います。日本が自国で生み出した富のうち、純粋に戦争に使われたのは『約50%』。残りの50%は国民の生活や国内の通常の経済活動に回されていました」
では、なぜ帳簿上の戦費は99%の額にまで膨れ上がったのか。そこにはある手口があった。
「原因は、戦費の半分を『中国大陸での借金』で賄ったからです。日本は中国の占領地に汪兆銘政権を樹立させ、その中央銀行から現地通貨を大量に借りました。日本の富を消費したわけではありませんが、日本政府が借りたお金である以上、帳簿には『日本の戦費』として記録されます。
結果として、【日本国内の富から出した戦費(50%)】+【中国の政権から借りた戦費(約50%相当)】が足し算され、『GNPの99%相当の額』という異常な数字が仕上がったのです」
占領地ごとに独自の通貨を発行し、そこから借り入れるという戦費調達体制を敷いたのは、主要参戦国の中で日本だけだった。
