累計100万部を超えるベストセラー『三千円の使いかた』をはじめ、お金や生活、暮らしをテーマに数々の作品を生み出している原田さん。最新作『#台所のあるところ』では、誰しものそばにある「台所」をめぐって6人の女性が描かれます。
原田さんが台所に寄せる想いや小説が生まれたきっかけについて、担当編集者がお話を伺いました。(後編/前編はこちら)
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オーブンには七面鳥が入らないと……
――原田さんは、帯広や大阪、東京とあちこちに住んだご経験があると思いますが、一番印象深い台所はどこですか?
原田:なんといってもシンガポールですね。
――シンガポール!
原田:夫の転勤の関係で3年ほど滞在していて、住まいは広めのマンションでした。向こうの家は家具が備え付けの場合がほとんどなので、キッチンにもすでにいろいろな国のメーカーの冷蔵庫や食洗器、オーブンが入っていました。
このオーブンが大きくて。クリスマスに七面鳥を焼く習慣があるので、まるごと一羽入らないといけないんですよ。シーズンには冷凍の七面鳥がスーパーに並ぶのですが、日本の鶏でも2キロくらいあるとだいぶ大きい部類でしょうけど、優にその3倍はありましたね。食洗器も大きくて便利なのに、使い方がわからなくて結局1回も使わず、手で洗っていました(笑)。
それだけ立派なものがついているのですが、本来はメイドさんが使うものだそうなんです。わが家にはいませんでしたけど、本来はそういう方がいて、家のことは全部やってくださるとか。マンションなのに、日本の台所の勝手口みたいなものがあって、そこから出るとメイドさん用の部屋がある。そういうことも含めて、シンガポールの台所は日本とはまったく異なる生活が垣間見える場所だったと思います。
――ほかの作品にも言えますが、今作にも美味しそうな料理がたくさん出てきますね。しらすトーストに、細く刻んだ大葉のたっぷり載ったたらこスパゲッティ、カリカリに揚げたガーリックの載ったチキンソテー……。お腹が空いてきました。
原田:しらすトーストは2週間に1回くらい作ります。しらすを買って数日、ご飯にかけて食べるのに飽きた頃に(笑)。

