平成16年(2004年)初夏、山梨県を訪れていた台湾人旅行者のリン・シャオユー(当時21歳)が、深夜の道端で見知らぬ男に拉致された。
犯人のカワムラショウタ(当時25歳)は、手足を縛った彼女を監禁して15時間にわたり連れ回した末、人気のない側道で強姦に及ぶ。しかし直後、被害女性が必死に発した「警察」という言葉を恐れ、カワムラは最悪の決断を下した。身勝手極まりない殺人と証拠隠滅工作、そして残された遺族の深い悲しみとは。
※登場人物の氏名は仮名です
◆◆◆
マフラーで絞められた首と…
6月29日午後3時20分頃。山梨県の東富士五湖道路付近に停められた車内で強姦の被害に遭った直後のリンは、「警察」「レイプ」「誘拐」といった言葉を口にし、カワムラの犯行を強く非難した。その言葉を耳にした瞬間、カワムラの脳裏を支配したのは、被害者への謝罪や後悔ではなく、自らの身に降りかかる不利益への危惧であった。
「このまま帰せば、警察に捕まって刑務所に行かなければならない」。さらには、自らの家族や、自身が所属し、やりがいを感じていた消防団にも迷惑がかかるという思考が頭をよぎった。自分の性的欲望を満たすために一人の女性を拉致し、尊厳を奪っておきながら、自らの社会的立場や世間体を案じたのだ。
犯行の発覚を免れるため、カワムラはリンの口を永遠に封じることを決意した。
カワムラは、背中を向けていたリンの背後に回り込むと、車内にあったマフラーを彼女の首に巻き付けた。リンが仰向けに倒れ込むと、カワムラはさらにその体の上に馬乗りになり、今度は自らの両手でリンの首を強く絞め付けた。
顔が変色し、両目が半開きになり、口から舌がはみ出す状態になるまで、カワムラは手を緩めなかった。リンが完全に事切れたことを確認して手を離した後も、息が漏れるような音が聞こえたため、「確実に息の根を絶とう」と考え、さらに首を絞め続けたという。大好きだった日本に、実の兄とともに台湾からやってきた21歳の女子大生の命は、理不尽な暴力によって完全に奪い去られたのである。
