平成16年(2004年)の初夏、観光客で賑わう山梨県富士河口湖町で、一人の外国人旅行者が夜の闇に消えた。台湾から訪れていた21歳の女子大生が、深夜のコンビニエンスストアへ向かったわずかな隙に、面識のない男に車で拉致されたのである。
手足を縛られ、車のトランクに閉じ込められたまま、富士山麓から静岡県沼津市へと連れ回された約15時間。見知らぬ異国の地で彼女が直面した恐怖と、その後に待ち受けていた絶望的な結末は、のちに開かれた法廷で生々しく語られることとなる。一人の男の果てしない性欲と自己保身が引き起こした、凶悪な犯罪の足跡をたどる。
※登場人物の氏名は仮名です
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異国の夜道に現れた「ナンパ目的」の車
リン・シャオユー(当時21歳)は、台湾の大学で日本語を専攻する学生だった。将来は日本で働くか、母国で日本と関わる仕事に就きたいという目標を持っていたという。平成16年6月27日、彼女は実の兄とともに4泊5日の団体観光ツアーに参加し、日本の地を踏んだ。東京周辺のテーマパークなどを巡った後、翌28日の午後8時頃、一行はその日の宿泊先である山梨県南都留郡富士河口湖町内のホテルに到着した。翌日は果樹園や別のテーマパークを訪れ、東京のホテルへ向かう予定が組まれていた。
同日午後11時15分頃、リンは台湾にいる交際相手と携帯電話で通話をしながら、一人でホテル近くのコンビニエンスストアへと歩いて向かった。目的は携帯電話のプリペイドカードを購入するためである。午後11時23分頃、店員と言葉を交わした後に彼女は店を出た。
その頃、無職のカワムラショウタ(当時25歳)は、自らが運転する普通乗用車を走らせていた。目的は「ナンパする相手を探すこと」である。午後11時30分頃、歩道を一人で歩くリンの姿を見つけたカワムラは、車を歩道上に停めて降車し、ドライブに誘った。
見知らぬ男からの突然の誘いに対し、リンは頑なに拒否し続けた。しかし、カワムラは諦めることなく執拗に誘いを繰り返した。自身の誘いが受け入れられないと悟ったカワムラは、突如として態度を豹変させる。
助手席の背もたれを自らの拳で激しく殴打し、リンに向かって「ぶっ殺すぞ」と怒声を上げたのである。深夜の路上でドスを利かせた声で脅迫されたリンは、恐怖のあまり表情も身体も強張り、その場から動けなくなった。カワムラは、動けなくなったリンを抱えて無理やり助手席へと押し込み、車を発進させた。
