遺体にウイスキーをかける異様な行動

 人を殺害したという現実に直面しても、カワムラは冷徹に証拠隠滅の作業を進めた。午後3時30分頃、カワムラはリンの遺体を下半身が露出した状態のまま車外へと引きずり出した。そして、側道脇の側溝の中へと遺体を投棄し、上から草木を被せて隠したのである。

 その遺棄の過程で、カワムラは異様な行動をとっている。「死体に睨みつけられているような気がした」などという理由から、リンの顔面にウイスキーを浴びせかけ、さらに頭部にビニール袋をすっぽりと被せて縛り上げたのである。人の命を奪っておきながら、死者に対する畏敬の念など微塵も感じられない行為であった。

 遺体を隠蔽した後、カワムラはリンの所持品から現金約500円を抜き取った。

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 その後、カワムラは柔道を通じて知り合った知人の先輩に電話をかけ、自らの犯行を告白した。当初、先輩から説得されて自首する気になり、交番に赴いたものの、警察官が不在だったため、待っているうちに逮捕されるのが怖くなったカワムラは逃走。逃走中、車内に残されていたリンの携帯電話機を燃やして損壊し、遺留品を投棄するなどの罪証隠滅工作を図り、最終的に新宿の交番へ出頭したのは、事件から3日後の7月1日のことであった。

法廷でひっくり返された自白

 逮捕直後、カワムラは警察の取り調べに対し、拉致から殺害に至るまでの犯行の全容を詳細に自白し、図面を描いたり犯行の再現を行ったりしていた。しかし、時間が経つにつれ、彼の供述は不自然な変遷を見せ始める。

 そして、初公判において、カワムラの態度は決定的に豹変する。殺人と死体遺棄については認めたものの、わいせつ目的略取や逮捕監禁、強姦については真っ向から否認したのである。

「無理やり車に乗せてはいません。声をかけると応じてくれた。最初から乱暴するつもりはなかった」

「テープで縛ったり、トランクに入れたりしたことはない」

「セックスについても、拒まれなかったので同意してくれたものと思った」

 自らの罪を極力軽く見せるため、略取も監禁も強姦もすべて「合意の上であった」と主張し始めたのである。弁護側もこれに沿って、被害者の遺体に緊縛の痕跡がないことや、コンビニ等で逃げ出さなかったことなどを根拠に、監禁状態ではなかったと主張した。さらに、精神科医が責任能力について調べていることも明らかにし、刑の減軽を図る姿勢を見せた。