おかげでそれ以来、あまり髪の毛のことで落ち込まないようになりました。そうしているうちに、大量に髪の毛が抜けることもなくなりました。あれはなんだったのでしょう。もしかすると他の動物同様に、生え替わる時期だったのかしら。

 今は、もう禿げる夢を見ることはなくなりました。でも、きちんとセットしないとすぐぺちゃんこになってしまうほどボリュームに欠ける。親しいヘアメイクさんに相談したところ、

「アガワさんの髪の毛は、その年齢で少ないほうではないですよ。ただ、歳とともに細くなっているのは事実かもね」

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 中学時代、ポニーテールにして登校したら、誰かに呼ばれて、「なあに?」と振り返った勢いで、私の束ねた髪の毛が回転し、

「痛ッ。アガワの髪、多すぎ!」

 友だちの顔を思い切り引っぱたくという事件があったのを思い出します。

 そう、あの頃、私は「髪の毛が多い」と言われていたのにねえ。歳を重ねるに従って、確実に毛髪は減ったり細くなったりするのです。だから私は若い人たちに言いたい。

「脱毛したい」とか思わなくて大丈夫

 剛毛が悩みだとか、毛が濃くて恥ずかしいとか、脱毛したいとか言っている若者よ。大丈夫、自然に減っていきますから。すっかり生えなくなりますから。

 そしていつか、髪の毛が多かった頃のことを懐かしく思い出す日が訪れることでしょう。だから今のうちに、せいぜい自分の豊富な髪の毛を愛でておくことです。

年とる力 (文春新書)

阿川 佐和子

文藝春秋

2026年5月20日 発売

最初から記事を読む 「まるでしょぼくれた風船」年齢を重ねるにつれてどこもかしこもシワシワに⋯それでも阿川佐和子さんが「老い」を受け入れられた理由