長男は小学校から高校まで野球をしていました。私はあまり熱心な親ではなく、子どもの試合を見に行ったのは高校3年最後の夏の大会だけ。ユニフォーム姿の孫が「勝ったよ」と帰ってくるとリビングの金田正一が「おっしゃ! よかったな!」と迎える全日警ホームセキュリティーのCMが脳裏に刷り込まれているせいか、あれが野球をやる子どもとその親族の理想だと思っている節がありました。
実際に子どもの試合を見て、私は後悔の念にかられました。見なきゃよかった。もう何から何までにダメ出しをしたくてたまらなくなってしまう。常日頃「子どもはのびのび自由に育ってほしい」とか言ってるくせにです。
「初球の甘い球を簡単に見逃して、2球目のクソボールに手を出してファール、自ら追い込まれる」「意図が見えない。漫然と打席に立つな」などと知ったような口を叩き、最終的には「結局気合いだから。気合い見せたやつが勝つから」と地元の論理をカマす。野球やったことない、なんならルールもよくわかってない私が、実際に練習を重ね試合を戦ってきた長男に対して、全てを知ってるかのように語る。息子も「こいつ何もしらんよな」と思いつつなんか神妙な顔でそれを聞くのです。私はこの時自分の中に眠る「傲慢な親」「権力者たる親」の存在に気づき愕然としたのを覚えてます。ずっとカネやんでいればよかった。子どもには「おっしゃ! よかったな!」以外言うことないはずなのに。
阿部慎之助前巨人軍監督の逮捕が報じられた、5月25日夜。前代未聞の現役プロ野球監督逮捕、しかもそれが18歳の長女に対する暴行容疑ということに、野球界のみならず世間は騒然としました。
世間で見られた二つの反応
この件について、世間は二つの反応を見せていました。一つは元プロ野球選手の父親と18歳の長女という、体格差も権力勾配もある状況で発生した暴力への非難です。そしてもう一つは、「たかが親子喧嘩で偉大な野球選手が職を追われるべきではない」「そもそも親子の問題を生成AIに聞くなんて」というもの。「阿部前監督逮捕をどう受け止めるか」は今、一種の社会的なリトマス試験紙になっているのだと思います。
