1日で1億円を使う太客の正体
——結局、お客さんは何人ぐらいいたのでしょうか。
夜野 月1回以上通ってくれるお客さんが、常時10人近くいましたね。最初のうちは、多くの人に営業をかけていたのですが、徐々に人数を絞るようシフトしていきました。お客さんが多いと、常に電話やLINEを続けて、関係をつなぎ止めておかないといけないので、兼業だと限界があると悟ったんですよね。
1回に使うのが数万~10万円程度のいわゆる“細客”でも、数日連絡しないだけで、他店のホストに浮気されたり、何の前触れもなく音信不通になったりする。そしたらまた別のお客さんと、一から関係性を築き上げないといけないので、相手にする人を増やすと本末転倒になってしまうんですよね。
——そうなると少数精鋭で、大金を使ってくれるお客さんがいたと。
夜野 いわゆるエースと呼ばれるお客さんには、2025年の最終営業日に、1億円使っていただきました。
——1日で1億円……。
夜野 もともとTikTokライブを見て、来店してくれた50歳ぐらいの方なのですが、資産家で「ホストには30年以上通っている」と話していました。
その方が「ホスト通い」を最後にしたいということで、2025年の営業最終日に、ペルフェクションという超高級コニャックを注文してくれました。そこで年間売上が3億円の大台に乗り、僕自身もこの区切りでホストを引退しました。
「トイレが詰まったから来て」と言われても断れず……“召使い状態”に疲弊してしまった
——それほど売上が上がっても、ホストを引退されたのはなぜでしょうか。
夜野 はたで聞くと3億円ってすごいですけど、じゃあもう1回できるかというと、もうできないぐらい心身が疲弊していたと言いますか。
——それは営業が大変だったのでしょうか。
夜野 1億円を使ってくれた方の話で言うと、もともと3億円近く使ってくれるという約束だったんです。
そのために日々の連絡はもちろん、いきなり「トイレが詰まったから家に来て欲しい」などと、急な呼び出しも多かったんです。会いたい口実なのかは分かりませんが、深夜2時でも呼ばれたら駆けつけないと、「もうお店には通わない」と言い始めるんですね。要は、お金を使うと匂わせておき、相手にしてくれないなら前言撤回すると揺さぶることで、ホストとの関係が途切れないようにしているのだと思います。
いわゆる召使いのような扱いを受けながらも、大金を使ってくれる保証はないわけですよ。店舗のイベント時に「毎回まとまったお金を使う」と言いながら、その都度はぐらかして、結局は毎回数万円しか使わない。そんな駆け引きのようなやり取りを、もう何十回も繰り返して、ようやく年間の営業最終日に1億円を使ってもらったんです。
