ところが、情報を軽視するわりには、「無線封止」にはかなり神経質でした。戦闘に入ったら、電波を出さない。自分の位置を知られるのを恐れてのことです。しかし、そのために、たとえば連合艦隊に重要な情報が入っても、機動部隊に無線で伝えることができなくなってしまいました。ミッドウェイ海戦では、海戦の前日、連合艦隊旗艦、戦艦大和の敵信班(敵の無線を傍受します)が、ミッドウェイ島付近に敵空母がいるらしい呼び出し符号を傍受します。しかし、無線封止中ですからこのことを機動部隊に伝えませんでした。どうせ赤城でも傍受しているだろうというのですが、戦艦の通信設備と空母のものとでは天と地ほどの差があります。空母は飛行機が発着艦する関係で、マストをそう高くできない、つまりアンテナを高いところにつけられませんから、どうしても通信能力が下がります。結局、赤城はこの通信を傍受しておらず、敵空母はいないという前提で決戦海面に突入してゆくのです。
黒島亀人の闇
米空母出現の可能性を機動部隊に伝えなかったのは、山本五十六のお気に入りである連合艦隊先任参謀の黒島亀人の判断とされています。出撃前に山本が、今回の作戦は敵空母を誘い出して撃滅することが目的だから、ミッドウェイ基地攻撃部隊が出撃した後、残った攻撃機は艦船攻撃用の魚雷や爆弾を装備するようにと指示したにもかかわらず、それを命令に書き込まなかったのも黒島です。ミッドウェイ敗戦後、草鹿や源田に「なぜ半数を雷装で待機させなかったのか」とかみついたとされますが、それを徹底しなかったのは彼でしょう。
また、『戦史叢書』を編纂した防衛庁防衛研修所戦史室/戦史部(当時)の質問に対して、黒島はなんと、山本の真意がわからなかったなどと答えています。先に述べた山本のパーソナリティからすれば、そういうこともあり得るでしょうが、作戦を起案する参謀としては許されないことであり、不可解というほかありません。
