加えて、ミッドウェイ海戦前に、整備の担当者も人事異動の大波をくらっています。不慣れな新人を交えての作業は、さらに時間がかかったことでしょう。そして、一番大きいのが、これを戦闘中にやらなくてはならなかったことです。ミッドウェイの米基地航空隊の攻撃を受けているさなかですから、艦は爆弾や魚雷を避けるために右に左に舵を切り、大きく揺れます。

 また、上空直掩の戦闘機も、ローテーションを組んで、着艦させては発艦させ、常に一定の機数を滞空させておく必要があります。しかし、艦上機を発艦させるには、艦首を「風に立てる」、つまり、風上に向かって空母を高速で走らせ、合成風力を得なければなりません。この運動によっても、兵装転換作業は妨げられます。そう簡単に対艦攻撃の準備ができるような状況ではありませんでした。

利根四号機からの報告

 どうも上が油断すれば、下はもっとゆるむというか、現場も緊張感を欠いていたようです。重巡洋艦筑摩では対潜哨戒機を先に出したため、索敵機の射出が遅延しました。重巡洋艦利根ではカタパルトの故障で、発進が30分も遅れました。わずか7機で、さなきだに散漫な索敵網であるのに、その形成がうまくいかない。

ADVERTISEMENT

写真はイメージ ©AFLO

 しかも、さまざまな錯誤が生じました。まず、「筑摩一号機」、筑摩から発進した水上偵察機が、まさに米機動部隊の上空を通過していながら、雲上にいたために、これを見逃すという失態を演じます。しかも、米艦上機と遭遇しているのに、それを報告しませんでした。ついで、「利根四号機」、利根の出した索敵機が、ついに米空母を発見するのですが、実際に向かっている方位と、地球の磁場の影響を受けて偏差が生じるコンパスの方位との修正を誤り、本当の位置とはかけ離れたデータを打電してしまいます。

 さりながら、この「利根四号機」が、午前7時半ごろに打った「敵らしきもの十隻見ゆ」という電信が、米機動部隊に関する第一報となりました。これを受けて、南雲機動部隊の司令部はてんやわんやの大騒ぎとなります。それはそうでしょう。「本日敵機動部隊出撃の算なし」と判断して、兵装転換にかかったばかりのところに、米艦隊が出現したのです。しかも、「敵らしきもの」というのもよくわかりません。はたして、空母なのかどうなのか。

 そこで、いったん兵装転換を中止することとし、また、利根四号機に敵の艦種を知らせよとの指示が出されます。