まあ、でも昔の親って子どもを殴ったり、家の外に放り出したりするのは当たり前だったし、それに比べればママはだいぶマシな方だけど。

 ママがやらないことは、代わりにパパが全部やっていた。

 パパは私の家での状況を察して、ヒヤヒヤしていたらしい。

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「後藤、お前、アンナが大丈夫か、見に行ってくれ」

 と、よく釣り仲間の後藤さんを様子見に行かせていた。

 幼稚園のころは、レイコさんという女性が家にいた。私の乳母みたいな存在だ。例えば、映画の「東映まんがまつり」とか、遊園地とか、子どもの好きそうなところには、もっぱらそのレイコさんが連れて行ってくれた。

 パパ、後藤さん、レイコさん、この3人がいなかったら、今ごろ私はどうなっていただろう。道を踏み外して、グレちゃってたかな。そう考えると、ちょっと怖い。

 

授業参観にママが来ない

 川村小学校には父親参観日と母親参観日があった。母親参観日には、さすがのママも欠席するわけにはいかない。「行くわよ」と約束してくれた。

 だけど、当日、教室に次々と入ってくるお母さんたちをチェックするものの、一向にママは現れない。「アンナのママ、来ないね」と隣の席の子に言われ、寂しさが込み上げてくる。

 授業が始まってからも、教室の外をチラチラ見てはため息をつく。先生が黒板にチョークで問題を書いている隙に、パッと後ろを振り返ってはママがいないか確かめる。

「どうしたんだろう」

 あきらめかけたとき、ガラガラと教室の扉が開く音が聞こえた。

 ママだ! 安堵する気持ちと嬉しさで胸がいっぱいになった。

 授業終了のチャイムが鳴るやいなや、ママのもとへ駆け寄り、なんで遅れたのか問いただす。

 驚いたことに、隣の「竹組」でずっと座っていたらしい。私のクラスは「松組」だ。ママは漢字が読めない。だからよくわからないまま、隣のクラスにいたというから驚いた。

「アンナちゃん、松組ですよ」

 さすがに誰かが気づいて教えてくれたから良かったけど、もっと早く言ってよ、とも思う。娘のクラスをろくに知らないママもママだ。

 これはいかにも天然ボケなママらしいエピソードだろう。