「服に匂いがつく」のが嫌…東京ではウケない理由

 もうひとつの問題はその匂いだ。強烈な熟成臭を「クサウマ」と感じる人にとっては中毒性があるが、独特なその匂いは好き嫌いが分かれるため、苦情になりやすいというのだ。東京の飲食シーンでは、無臭化や上品さを求める傾向が強く、「服に匂いがつく」ことを気にする人も多い。

 家族連れや女性客をターゲットにすると、その匂いは障壁となる。結果、豚骨の強烈さを抑えた「ライト豚骨」や「豚骨魚介」への変化が進み、本場の博多スタイルが再現されにくいのである。

 現代の消費者は味の安定を求める傾向が強い。かつての豚骨ラーメン店は時間帯によって味がブレて当たり前だった。昼は薄めで夜は濃い、あるいは日によって匂いの強弱がある。これを「ライブ感」として楽しむ文化もあったが、SNSや口コミ全盛の時代には「味がブレている」とネガティブに受け止められやすい。

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 結果、取りきりスープや業務用スープの需要が伸び、逆に本格的な呼び戻し豚骨の魅力が伝わりにくいという逆説が生まれている。宅配寿司と職人が目の前で握る寿司の違いのように「ライブ感」を楽しむトレンドはあってもいいと思うが、クサウマ豚骨についてはこの「ライブ感」を理解する層が限られてしまっているのだ。

「博多豚骨=安い」イメージがネックに

 さらにクサウマが広がらない大きな理由は、「現地の博多豚骨ラーメンは安い」というイメージだ。現地・博多ではラーメンがとにかく安く、500~600円で食べられることは当たり前で、安いところだと200~300円台というところもある。「1000円の壁」と戦っている都内のラーメン店において、この常識は大変厳しい。

写真はイメージ ©AFLO

「安価なイメージがあるため、利益を出しにくいとハナから敬遠されている可能性も高いと感じます。昔よりガス代やゴミ処理代も高騰しているので、その意味でも豚骨ラーメンには厳しい時代です」(元「きら星」店主・星野能宏さん)

「骨もたくさん使いますし、炊き続けるためガス代もかなりかかります。さらには卓上に紅ショウガや辛子高菜、ニンニクなど無料トッピングをたくさん用意しなくてはならず、このコストも考えると安く提供することは難しいです。はっきり言って店主が好きじゃないとできないですね」(「博多ラーメン 和」店主・馬場圭佑さん)