昨今、「素ラーメンブーム」が話題になっているが、それは必ずしも好んで選ばれているスタイルではない——ラーメンライターの井手隊長はそう指摘する。
トッピングを排除したシンプルな一杯が流行ったのは、美味しさのためか、それとも不景気に対する“苦肉の策”か。『ラーメンビジネス 麺好きから評論家まで楽しく読めるラーメンの教養』(クロスメディア・パブリッシング)より、素ラーメンブームのカラクリに迫る。
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「素ラーメン」ブームの背景に「1000円の壁」
ここ数年、ラーメン界の一部で静かなブームとなっているのが「素ラーメン」だ。チャーシューも味玉もメンマものらず、スープと麺のみ。見た目はあっけないほどシンプルだが、SNSや一部のラーメンマニアの間で注目を集めている。
この「素ラーメン」、一見ストイックな料理哲学から生まれたように見えるかもしれないが、実のところは、業界を取り巻く厳しい経済的現実に対する“苦肉の策”としての側面が強い。特に、今ラーメン業界全体を悩ませている「1000円の壁」が、素ラーメンという選択肢を生んでいる大きな要因だ。
ラーメンは、もともと「安くて旨い庶民の食べ物」として日本中で定着してきた。しかし、近年の物価上昇や原材料費の高騰、光熱費・人件費の上昇などが、ラーメン店の経営を直撃している。小麦粉、豚肉、鶏ガラ、醤油、煮干しなど、ラーメンを構成するあらゆる材料の価格が上がり、さらに設備や店舗家賃の費用まで考えると、ラーメンの価格は限界に近づいている。
にもかかわらず、多くの店が「ラーメンは1000円を超えてはいけない」という暗黙の価格の天井に苦しんでいる。これがいわゆる「1000円の壁」だ。ここ数年で緩和はしてきているものの、1500円、2000円を付けられるかといったらそれはまた別問題だ。どちらにしても、原価が上がっても価格を思い切って上げられず、トッピングを豪華にすればするほど採算が悪化するという矛盾に陥っている。
