もっとも最初にそういう関係性を築いてしまったせいか、その後、どの局の番組の仕事を始めても、なぜか私は、ディレクターの一員になってしまうのです。まあ、それは自らがそういう立場を望んでいるふしもあり、決して嫌ではないのですが、たまには私が現れた途端、
「『あ、出演者の阿川佐和子さんがいらっしゃいました!』と、あたりの空気がにわかにピリッとする、なんてことはないのか?」と仲間に聞いたら、「緊張してますよぉ、それなりに」と笑われる始末です。
歳下と遊ぶ
そういえば、ワシントンD.C.に住んでいたとき、私はスミソニアン博物館のボランティアスタッフとして、博物館の敷地内にある保育園で働いておりました。博物館に勤める人たちの幼い子どもを日中預かる、子どものためのデイケアセンターです。
そこには四歳から五歳ぐらいの子ども二十人ほどが集まっていました。可愛い子どもたちに囲まれて、私は絵本を読んだり(といっても発音が変なので、子どもたちに笑われていましたが)、泣きながら近寄ってくる子どもをなぐさめたり、ケンカを始める子どもたちを制したり、いわばアシスタント保母さんを演じておりました。
一度、泣きべそをかきながら私のところへ、
「サワーコ、アイム スケー」と近づいてきた女の子がおりました。何を言っているのかわからない。
「ワット ディ ジュ セイ?(なんて言ったの?)」と聞き返すと、「アイム スケー」。まだわからない。
「ウェル。クッジュー スピーク スローリー?(もう少しゆっくり話してくれる?)」とまた聞き返し、それでもわからないでいると、女の子はパタッと泣くのを止めて、
「もういい。サワコには頼らない」
言い捨てて、去って行きました。トホホ。ちなみに「アイム スケー」とは、「I'm scared」怖いよぉ、という意味でした。怖さも忘れるほど呆れたらしい。
そんな頼りないボランティア臨時スタッフのサワコだったせいか、しだいに子どもたちに舐められるようになりました。