違う世界に宝あり
自慢じゃないですが、私には歳下の友だちが何人かおります。男性に限らず若い女性の友だちも。一緒にご飯を食べたりゴルフをしたり仕事の話をしたりする関係。ピアニストやコラムニストやサラリーマンやプロデューサーや専業主婦やミュージシャンなど、職種も立場もバラバラです。
違う仕事をしているから、仕事の細かいことについて深く語り合うことはさほどないですが、違う世界で生きているからこそ、刺激になることは山ほどあります。若い人の話を聞いて、学んだり、日本の未来に希望を抱いたり、老年としてたっぷり反省したりもします。
一年間のアメリカ遊学から帰国してまもなく、『週刊文春』のインタビュー連載を始めました。その最初の頃にバイオリニストの五嶋みどりさんにインタビューする機会がありました。そのご縁で、五嶋みどりさんが主催するレクチャーコンサートの司会を引き受けることになったのです。
レクチャーコンサートとは、会場に集まったお客様の前で、みどりさんが子どもたちにバイオリンのレッスンをするコンサートです。みどりさんが全国六千人ほどのバイオリンを弾く子どもたちから寄せられた演奏テープを聴いて、その中から六人を選び、舞台へ上げて、直接レッスンをつけるのです。
最年少はたしか五歳ぐらいの女の子で、最年長が中学二年生の男の子でした。最初に子どもが登場して、観客の前で一曲、披露します。その演奏が終わるとみどりさんが袖から現れて、今、弾いた演奏の、「ここを、こうしてみたら?」とか「どんな気持でここのメロディを弾きたい?」などと質問したり指導したりします。そのあと、もう一度、子どもに同じ曲を演奏させてみると、まるで音色が違うのです。