たったひと言ふた言のアドバイスを受けただけなのに、こんなに上達するものなのかと司会者の私も驚きました。
仲良くなった中学生との「意外な再会」
そのとき、最後に登場した最年長の男の子の演奏は最初から素晴らしく、みどりさんのレクチャーを得て、さらに美しい演奏となりました。そしてその男の子が当日の奨励賞を得て、幕を閉じたのです。
さて、奨励賞を得た男の子は広島から来ておりました。私は父が広島出身だったこともあり、
「広島なの? 私も小さい頃から何度も広島に行ってるのよ」
なんて会話を交わして少し仲良くなりました。
その後、広島の呉でイベントがあり、私が司会をつとめることになりました。主催者のオジサンに、「シンポジウムとはいえ、音楽かなんかの企画も加えたいんだけど、誰か適当な演奏家を知らない?」と相談されたので、即、その男の子のことを思い出し、
「まだ中学生なんですが、素晴らしい演奏をするんです。家は広島だから近いし」
「それはいいねえ。是非、お願いしてみてくれる?」
こうして私が彼のお母さんに連絡を取り、学校帰りにホールに来てもらい、一曲だけのミニコンサートが催されることになりました。
そんなこんなでさらに仲良くなったのですが、その後、ぱったりご無沙汰をしていました。
そして数年後、私は『週刊文春』の対談で指揮者の小澤征爾さんに会うため、そのとき音楽祭が行われていた松本を訪れておりました。対談を終え、記念撮影をするためにコンサートホールの舞台の近くへ行きました。舞台では小澤さんが声をかけて集まったジュニアオーケストラのメンバーが練習をしていました。記念撮影の背景としては完璧です。
彼らをバックに撮影を終え、いざ帰ろうとしたとき、
「アガワさん、アガワさんですよね?」
うしろから声がしました。振り返ると、バイオリンを手にした青年が立っています。ん?