絶好調の業績に潜む「死角」とは?
もうひとつ、魁力屋が抜きんでているのは、「いまどきの外食企業としての実力」だ。
従来のような個人経営のラーメン店だと、カウンターだけの店舗で頑固な大将がこだわりの一杯を提供、経営や接客は二の次――といったイメージを持つ人も多いだろう。しかし、魁力屋はどの店も座席配置がゆったりしていて、家族でくつろげるようなボックス席も多く設置されている。
また、店によっては車室が幅広の駐車場を整備するなど、味だけでなく「安心して入れる店舗づくり」の巧みさが目立つ。こういった店舗を郊外・ロードサイドやフードコートに出店することで、2021年度から2025年度までで119店→175店という急成長を遂げた。
この間、売上もほぼ倍増(70.8億円→138.6億円)。この状況でも、自己資本比率が5~6割で推移(外食企業は通常2~3割程度)しており、ここまで成長と財務の安定を両立させる外食企業も珍しい。だからこそ、MPキッチンをはじめとするM&Aのタイミングごとに、危なげなく融資を引き出せているのだろう。
そんな魁力屋に、死角はないのか。同社の今後の成長を占う天王山が、いま迫っている。他ならぬ旧・伍福軒の「魁力屋化」に伴う、都心部への出店の成否だ。
未開拓だった都心部で勝ち筋を見つけられるか
かつて天下一品であった伍福軒は、渋谷店がセンター街のド真ん中、新宿西口店は新宿駅・ヨドバシカメラのすぐ裏手・国際通り沿い……このように各店とも立地が良い傾向にあった。魁力屋の今後は、この都心・駅前の超一等地で繁盛店を築けるかにかかっているのは間違いない。
というのも、魁力屋は全国で170店以上を出店しているにもかかわらず、伍福軒のような都心立地に出店し、繁盛店に導いたような経験が、意外なほど少ないからだ。東京都内22店舗のうち、都心は五反田店・渋谷宮益坂店などに限られ、ほかは「東久留米店」「鶴川店(町田市)」「練馬インター店」などの郊外店がメインとなっている。
郊外が主戦場のチェーンが都心に出店すると、都心に遊びに来た人々が「家の近くのバイパス沿いにあるから、わざわざ入らない」といった選択肢を取る可能性もある。郊外で成功してきた法則も通用しないリスクは十分に考えられる。


