〈あらすじ〉
パリ郊外にある介護施設の施設長として働くマリー=ルー・フォンテーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)は、⼊居者を⼈間らしくケアする理想を掲げて奮闘中だ。しかし現場スタッフとの軋轢、経営面の課題など問題は山積……。そんなある日、自閉症の少年・智樹(黒崎煌代)が街に一人でいるところを見かけた彼女は、少年を保護。彼を追ってきたのが智樹の祖父で俳優の清宮吾朗(長塚京三)と舞台演出家の森崎真理(岡本多緒)だった。
その縁から真理が演出する吾朗の一人芝居『近くで見たら誰もまともでない』を観劇したマリー=ルーは、上演後のやり取りで、真理が余命半年を宣告されたガン患者であることを知る。お互いに興味が湧いた二人は、夜を徹して夢中で語り合う。しかし翌日、真理は急に具合が悪くなり――。
〈見どころ〉
「少子高齢化は資本主義の必然」と言うマリー=ルーは、かつて日本で文化人類学を学んでいた。一方の真理は、パリで学んだ「哲学を実践」するために演劇を選んだ。止まらない二人の対話の行方は。
“魂の絆”を結ぶ2人の女性の物語
『ドライブ・マイ・カー』(21)でアカデミー賞国際長編映画賞に輝いた濱口竜介監督が選んだのは、哲学者・宮野真生子と人類学者・磯野真穂による往復書簡集。これを原作として、舞台をパリに、主人公をフランス人と日本人に置き換えて、全く新しい物語として描く。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★★☆メロドラマへの滑り落ちを避け、主題を根気よく煮込んだ作法を評価したい。セーヌ河畔へ至る長い移動撮影や、感情の急所に言葉が触れる瞬間は魅力的だが、原動力は、生身の鼓動を実直に伝えようとした女優ふたりの献身だ。
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斎藤綾子(作家)
★★★☆☆冒頭の現場の苦労はリアル。慈しみをもって命を見送ろうとする結末の演出も面白い。だがヒロイン二人が資本主義や搾取の構造を嘆く会話が延々続いて辟易した。頻尿気味の高齢者には次第に具合が悪くなる3時間16分かと。
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森直人(映画評論家)
★★★★★強靭な軽やかさに釘付けの三時間強。対話の可能性に賭け、偶然がもたらす今を信じること。世界の困難を見据えつつ、我々はその内部で生きるしかない。これまでの濱口映画が全て積み重なった上に開けた風景がここにある。
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洞口依子(女優)
★★★★★人が生きるための事について、相互理解の過程をゆっくり眺める映画体験。私はあなたの夢。その夢を体現した主演女優。そよぐ風、鳥の糞、山間で食べるカップ麺さえも愛しく優しい時間と感じられた。観る全てが映画。
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ゲスト評者
竹田ダニエル(ジャーナリスト・研究者)★★★★★加速する資本主義によって生まれるあらゆる世界の理不尽や問題を、繊細な世界観で表せる力量に映画のロマンを感じる。長い作品なので、細かい描写にも注目してもう一度見たい。
たけだだにえる/1997年生まれ、アメリカ出身・在住。「カルチャー×アイデンティティ×社会」をテーマに執筆、研究。2023年「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」を受賞。著書に『世界と私のAtoZ』、『アメリカの未解決問題』(共著)など。
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『急に具合が悪くなる』
6月19日(金)~
監督:濱口竜介 脚本:濱口竜介・ルディムナ玲亜
原作:宮野真生子・磯野真穂著『急に具合が悪くなる』(晶文社)
2026年/仏・日本・独・ベルギー/英題:All of a Sudden/196分
https://www.bitters.co.jp/soudain/




