約5万人にひとりの割合で発症する先天性疾患「トリーチャー・コリンズ症候群」の当事者として発信を続ける山川記代香さん。頬骨がなく、耳の形成もなく、呼吸や聴力にも影響が及ぶこの疾患とともに生きてきた山川さんは、これまで17回の手術を経験してきた。だが、身体的な困難と同じくらい、あるいはそれ以上に山川さんを悩ませてきたのが、日常に潜む"視線の凶器"だったという。

山川さん

怒りに任せた「じゃあやったるわ!」が転機に

 高校3年生の秋、登校中に下級生の男子数人から「怖~い」とからかわれた山川さんは、怒りのあまりその場に立ち尽くしてしまった。学校側がすでに障害について説明していたはずの後輩から、入学からずいぶん時間が経ったタイミングでの出来事だっただけに、「なんで今さら?」という思いが募った。

 帰宅してその怒りを母親にぶつけると、返ってきたのは「自分の口で自分の病気のことを話すしかない」という一言。山川さんは「そんなの無理!」と、人生で初めて母に反抗した。しかし母も引かず、売り言葉に買い言葉で山川さんは「じゃあやったるわ!」と言い返してしまう。

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「しまったな、と(笑)」と山川さんは振り返るが、結果として全校生徒の前で自分の言葉で病気を語るという経験へとつながった。「見た目の障害を持っている私の場合、基本的に人との関係はマイナスからのスタートで。でも、自分の言葉で語ることでより障害への理解も深まるんだなと学びました」と山川さんは語る。

 メイクや恋愛を「自分で封印してしまっていた」という時期も長かった。「メイクしたってこの顔じゃ変われないよね」と思い込み、恋愛への興味を示すことすらタブー視していた。そんな殻を破ったのも、母親の「したいんだったらやってみたらええやん」というあっさりした一言だったという。

 初対面では「優しそう」「真面目」と言われることが多いという山川さんだが、「それも結局周りに合わせているだけで、本来の自分を出していないから」と自己分析する。

 入学や進級のある4月はずっと嫌いだったが、「お花見を心から楽しめるようになったのはわりとつい最近」とも明かす。自らの言葉で語ることを選んだ高校生から、山川さんの気持ちは少しずつ変わりはじめている。

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