私たちはなぜ「何者にもなれていない」と焦るのか? そもそも「何者」って何? 現代社会を覆う「何者シンドローム」をジェーン・スーが解き明かす。

『週刊文春WOMAN2026夏号』に掲載されているジェーン・スーさんの人気しごと連載「はたらく私」第4回より、一部を抜粋し掲載する。

イラスト:kedamasugoine

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避けて通れないトピック「何者シンドローム」

 まだ何者にもなれていない。何者にもなれなかった。そんな言葉をよく耳にする。しかし、言葉を発する者から、何者かになりたい欲望が沸々と湧いてくる様子は窺えない。にもかかわらず、何者でもない自分を責め、意気消沈したり、焦ったりしているのだ。

 なぜ、そんな風に感じてしまうのか。正確には、なぜ、そんな風に「感じさせられて」しまうのか。

 仕事とは、働くとはどういうことかを私なりに紐解いていくのがこの連載だ。その過程で、この「何者シンドローム」は避けて通れないトピックである。「である」とか真面目に書いてしまったけれど、ちょっとここは一旦落ち着いて考えてみましょうよ、という気持ちでいっぱいなのだ。

 そもそも「何者」とは、どんな状態を指すのだろう。「そんなの誰だってわかるでしょ、すごい人のことよ」と呆れないでほしい。非常にまどろっこしく感じるかもしれないが、「何者とはナニモノか」を定義することは、何者シンドロームを理解する上でとてつもなく大切なので、しつこく因数分解をしていく。

 少々長くなりますが、お付き合いよろしくお願いいたします。