虎太郎か、シマケンか? 『風、薫る』りんをめぐる三角関係

『風、薫る』の虎太郎はまっすぐな青年だが、これまで小林が演じてきたキャラクター同様に決して言葉数が多いほうではない。りんに対する愛情も端から見れば丸わかりだが、これまで一度も口にすることはなかった。それは怖いからでも恥ずかしいからでもなく、小林が「虎太郎は、心から純粋な男の子で、自分より相手を優先する優しさを持っています」(※1)と語るように彼なりの思いやりなのだ。

 母親がコレラに罹患し、不安でいっぱいだった虎太郎の手を、りんが感染への恐れから握れなかった時、りんが虎太郎への思いを絶ち、家族のために商家へ嫁ぐことを決めた時、元夫から娘を取り返すべく、故郷に戻ってきたりんから東京で頑張っていることを聞いた時。虎太郎はりんの気持ちを即座に察し、「好きだ」と言いたい気持ちを抑えて、彼女の背中を見送る。その健気なまでの葛藤が小林の繊細な演技で手に取るように分かるから、自然と「報われてほしい」「応援したい」という気持ちが湧き上がってくるのだろう。

『風、薫る』公式Instagramより

 力強くもあり、相手を気遣う優しさを持ち合わせている虎太郎の人柄は、大きな歩幅で後ろを気にしつつ、ゆっくりと先頭を切る歩き方にも現れている。『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 風、薫る Part1』によると、小林は歩き方にもキャラクターが出てくると考え、撮影中は歩きながら役作りをしているという。

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『宙わたる教室』の撮影前にも岳人の生活圏内である歌舞伎町に足を運び、その街で生きる人としての説得力を出すために人間観察を行ったそうだ。『下剋上球児』のオーディションに向けては、キャッチャーとしての風格を出すために体重を4キロ増量。加えて台本には書かれていないことも含め、役の0歳から現在まで生い立ちを頭の中でイメージする(※2)など、ハード面とソフト面両方からの役作りを小林は徹底して行っている。そんな役に対する真摯な向き合い方も、業界の内外問わず、多くの人を惹きつける所以なのではないだろうか。幅広い層が視聴する朝ドラへの出演を経て、さらなる飛躍を遂げていくに違いない。

 6月19日に放送された第60回では、虎太郎が東京の製薬会社で社員として働いていることが明らかに。恋のライバルであるシマケンともついに対面を果たし、静かな火花を散らした後、りんに「俺、必ず出世するから」と宣言した。立派な王子様へと成長を遂げた虎太郎だが、果たしてりんと会えなかった時間を埋めることができるのだろうか。口には出さずとも、一途に育ててきたりんへの想いが届くことを願っている。

参照

※1 https://www.nhk.jp/g/pr/blog/vod-hutq72/
※2 https://realsound.jp/movie/2025/01/post-1911308.html

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