「なぜ日本アカデミー賞助演女優賞に伊東蒼がノミネートされていないのか?」
3月13日、日本アカデミー賞授賞式が行われる。ノミネートは1月19日に発表されたが、冒頭のような声がいくつも上がっていた。
伊東蒼は2025年に出演した『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』で、キネマ旬報ベスト・テン助演女優賞、ヨコハマ映画祭助演女優賞などを受賞している。日本アカデミー賞助演女優賞には『国宝』から3人がノミネートされているが、伊東がノミネートされていないのはおかしい、という声が上がるのも至極当然だろう。
それぐらい『今日の空が一番好き~』でヒロインの一人「さっちゃん」を演じた伊東の演技は、観る者の心を揺さぶるものだった。ギター(伊東の私物らしい)とスピッツが好きで、銭湯で一緒にバイトをしている主人公が好き。彼が振り向いてくれれば浮かれて、こちらも幸せな気持ちになる。彼が自分に興味がないと察すれば落ち込み、こちらも胸が痛くなる。
「圧巻だった」7分25秒の告白シーン
圧巻だったのは、届かないとわかっている思いをせつせつと訴える告白シーンだ。「好き」という言葉さえ使えない臆病な気持ちと相手への思いやりと優しさ、それでいてどうしても伝えたい思いをまっすぐに伝えようとする強い気持ちが錯綜する7分25秒。とても儚いし切ないのだけど、そこにはたしかに一人の人間のエネルギーと生命が息づいていた。観ているこちらが画面の中のさっちゃんの世界に吸い込まれそうなシーンだった。
もう一人のヒロインを演じた河合優実もさすがの芝居を見せていたが、伊東はそれに伍する存在感を発揮していた。若手を代表する俳優二人の演技を味わうだけでも、この作品を観る価値はある。


