「早い・安い」よりも「うまい」が第一
徹底的なマニュアル化を進める一方で、池田社長はそばの「おいしさ」には一切妥協しなかった。
「立ち食いソバは『早い・安い』が最優先される栄養補給の場ですが、うちは『うまい』が第一の“町のそば店”です。都心部の立ち食い店はスピード重視のため、麺を『茹で置き』し、天ぷらも『揚げ置き』します。しかし、うちは注文を受けてからかき揚げを油に入れ、それを見てからそばを釜に入れます」
おいしさの秘訣は、自家製麺と「茹でたて・揚げたて」の徹底にある。麺を茹で置きする場合、伸びないようにそば粉の比率を3割以下に落とす必要があるという。しかし、ゆで太郎のそば粉の比率は55%と高いため、わずか1分40秒でサッと茹で上がるのだ。
こうすることによって、そば粉の香りも楽しめる本格的な日本そばが楽しめるという。
「町のそば店」だから業界1位になれた
さらに、そばチェーンの多くが、工場で製麺したものを店舗に運んでいるが、ゆで太郎システムが運営している店舗では、すべての店舗で製麺機を使って自家製麺を行っている。しかも、その製麺機は客から見えるところに設置されている。
「私が『製麺機がお客さんから見えるようにする』と言ったら、信越食品の水信さんからは反対されました。『製麺機を使っているのを見られたら恥ずかしい』と言うんです」
昔気質の水信氏にしてみれば、そばの王道は手打ちで、製麺機を使うのは邪道だと思えたのかもしれない。信越食品でも手打ちではなく製麺機を使っていたようだが、職人が手打ちしていないことに負い目があったのか、客から見えないところに設置していたという。個人経営でやっているそば店の多くも製麺機だが、やはり客から隠している。それを池田社長は、あえて「見せる」ことにこだわった。
「だって、麺ができるところが見えるなんて楽しいじゃないですか。とくに子どもたちは、熱心に見ています」
「町のそば店」のレシピにこだわり、スピードよりも味を優先する。職人の技術をシステム化しながらも、「美味しい日本そば」のレシピを守り抜くことこそが、ゆで太郎が業界1位へと駆け上がった最大の秘訣なのだ。
フリージャーナリスト
1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。著書に『学校が合わない子どもたち』(青春新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(KKベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『日本の小さな大企業』(青春新書インテリジェンス)などがある。
