高齢とは思えないほどよく食べる

 長寿の理由は何なのか。

「この年になっても、というぐらいよく食べます。午後のガイドの時にはどんどん欲しがります」と伊藤さんは目を細める。ただし、風太ならではのこだわりがある。グルメで好き嫌いが激しい。

千葉市動物公園のレッサーパンダ舎では午後1時半、担当飼育員が展示場で食事を与えながらガイドをする。大好きな煮たサツマイモをもらう風太

 リンゴは冬の収穫時期には食べるが、夏場の輸入物は食べない。他の個体は食べるニンジンも残す。オレンジもあまり好きではない。

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 匂いでかぎ分けるらしく、「嫌いなバナナは匂いだけでフンという感じです」。

風太の夕食。若い時に比べて竹の葉が食べられなくなり、少しでも摂ってもらおうと粉末をかけてある。嫌いなニンジンは6頭で唯一入っていない

 食事は高齡者然としていない。「他園の20代のレッサーパンダには流動食を与えている場合もあります。でも、風太はドロドロが嫌いなのか、リンゴを擦ってかけるといやがります。普通に切ったものを好むのです。歯はだいぶん抜けていますが、ちゃんと噛んで食べています。ニボシを丸ごとバリバリ食べるほどです」。

 千葉市動物公園には6頭のレッサーパンダがいる。風太の息子クウタ(2020年に12歳で死亡)の妻メイメイも19歳と高齢だがニボシを丸ごと食べる。面白いことに若い4頭は丸ごと食べないので粉にしてかけている。

千葉市動物公園のレッサーパンダ6頭の夕食。 それぞれの状態や好みを反映して内容が違う。中央手前が23歳の風太用、中央奥が19歳のメイメイ用。この高齢2頭の餌にはニボシが丸ごと入っていて、バリバリ食べる。他の4頭用のニボシは粉末のふりかけ。奥の小さく切ったリンゴやサツマイモは与えた隙に、獣医が触診したり採血したりするための餌

 野生のレッサーパンダが好んで食べるのは竹だ。真竹(まだけ)は食べず、孟宗竹(もうそうちく)の葉を食べる。ただ、風太は年齢を重ねるとあまり食べなくなった。園では「それでも何とか食べてもらおう」とクラウドファンディングでミル機を買い、葉を粉にして餌にふりかけている。飼育員の工夫も長寿を下支えしているのだ。

今では甘くて柔らかい食べものが好き

 風太は老いるに従って甘くて柔らかい物が好きになった。煮たサツマイモが好物で、屋外展示場で飼育員がガイドをしている時にも手渡しでパクパク食べる。

 これには伊藤さんも少し迷う部分がある。飼育下のレッサーパンダは歯周病が敵だ。食べられなくなると命の危険にさらされる。甘いものを食べると歯周病になりやすい。このため果実を与える園が減ってきた。一方、竹も枝が歯茎に刺さるなどして歯周病の原因になる。

竹は通常購入しているが、質が悪くなる時期には園内に生えている孟宗竹を担当飼育員が刈り取る。きれいな葉を選ぶのでかなり大変な作業だ(千葉市動物公園)

 どちらを取るか。「平均寿命を大きく超えた風太は普通には食べさせられません。食べたい物があるなら栄養を取って長生きしてもらいたい。何かあるとガクンと体重が落ちてしまいます。そのためにも日頃から体に貯えておいてほしいのです」と話す。

 風太が特殊なところは他にもある。