大病を患ったが…

 野性味は生命力の強さにもつながる。

 昨年4月からレッサーパンダの担当になった伊藤さんは、その5年前にも担当したことがある。当時、風太は大病を患った。歯ぐきの奥の方に(うみ)がたまって食べられなくなったのだ。園内の動物病院に入院し、切開して膿を出す外科手術を行った。縫合した糸を抜くまでの間には皮膚病にもなった。改めて入院治療をする事態になり、「治るまでには何カ月も掛かりました」と伊藤さんは振り返る。

野性味があり、脚力が強かった風太も、ゆっくり踏みしめるようにして石を越えるようになった

 今年は大丈夫だったが、毎年5月になると3~4日から1週間、食べられなくなる。

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「毛が生えかわる換毛(かんもう)の時期でストレスがあるのに加え、ちょうど暑くなるから、体調を崩しているのかもしれません。食欲がなくなるとおしまいなのでヒヤヒヤします」と伊藤さんは語る。

 そうした時にも、風太は「生きようという力」を発揮する。「昨年5月には驚きました。3~4日食べられず、少し回復してきたので屋外展示場へ出しました。ここには近くの竹林から地下茎が伸びてタケノコが生えます。年を取ってからはあまり食べなくなっていたのに、この時はバリバリと食べました。まるで『治すために食べないと』と言っているようでした」。

 伊藤さんは、宮崎駿監督の劇場版アニメ映画『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)を思い出した。重傷を負った主人公のルパン三世が吐きそうになるほど食べて寝るシーンだ。「風太は『生きていこうという力』、そして『生き抜いていく力』を持っています。それが感じられるからこそ、多くの人がファンになり、今なお人気を集めているのではないでしょうか」と見ている。

 それ以外にも、風太には人をとりこにしてしまう、不思議なスター性があるのだった。(つづく)

次の記事に続く 「じっと見つめられたら胸がキュンと」「勘違いしてしまう…」レッサーパンダ風太くんのファンたちが語る“ときめき”の正体

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