暑さにも寒さにも弱い風太
レッサーパンダはヒマラヤに近いインド、中国、ネパール、ブータン、ミャンマーの標高1500~4000mの森林に生息している。このため暑さに弱く、JAZAのガイドラインでは「室温、気温は28度までが上限」とされている。JAZAは「これからどんどん暑い日が増えてくれば、屋外展示できる日は減っていくと想定されます。各園で屋外展示場の暑さ対策をしたり、エアコンの効いた室内展示場との行き来を自由にしたりするなどの対策をしています」と各園の苦労を代弁する。
同ガイドラインでは「適温は5度から25度」とされていて、風太は25度を超えると外に出さないようにしている。千葉市動物公園では他にも少しでも暑さがしのぎやすくなるよう、頭をひねっている。クラウドファンディングで屋外展示場にミスト発生機を取り付けると、「温度が1度下がり、行動性が上昇しました」と伊藤さんは話す。風太の展示場にはやはりクラウドファンディングで冷風の送風機も設営した。それでも7月5日に開催する「23歳記念イベント」は屋外で行えない。屋内の風太とレクチャールームに集まる人々をオンラインで結んで実施する。
では、寒さはどうか。伊藤さんは「高所に生息するだけに、他の個体は雪が降ると大喜びで駆け回ります」と話す。ところが風太は寒さにも弱く、冬にはエアコンに加えて、ストーブもつけて寝室を温める。
意外と人にはベタベタしない性格
逆に言えば、体に負担をかけない性格や嗜好性も長寿の要因なのだろうか。
愛嬌のある風貌からも「軟弱」なイメージを持たれるかもしれない。しかし、伊藤さんは「風太は野性味を失っていない個体です。若い時から人にベタベタしません」と言い切る。
身体能力も高かった。「若い頃は他の個体がひょこひょこと登るような場所を飛んで上がったそうです。他のレッサーパンダより足腰が強かったと当時の担当者に聞きました」と話す。
好奇心が旺盛で、物音に敏感に反応するのも、自然界で生き抜く力の一つだろう。
伊藤さんはそうした野性味が繁殖力に結びついたと考えている。
風太は2003年に静岡市立日本平動物園で生まれ、約9カ月後に千葉市動物公園へ移った。結婚相手のチィチィは長野市茶臼山動物園で生まれた同い年だ。千葉には風太に約1年遅れて来園し、2頭は10頭の子に恵まれた。
それだけではない。孫32頭、曾孫23頭、玄孫10頭、来孫5頭が生まれ、この世に生を受けた子孫は80頭に及ぶ。息子のコウタ(現在は死亡)は南米チリの国立動物園へ、孫のミライは静岡県浜松市の動物園から台湾の台北へと、一族は世界に広がっている。
国内にはJAZA加盟の動物園に同種のレッサーパンダが213頭おり、「風太の子孫は41頭」(JAZA)だ。なんと2割近くが風太の血族である。JAZAはソフトを活用して結婚相手を決めているが、「同じ血縁の個体ばかりが繁殖して増えてしまうと、遺伝的多様性が失われてしまうので、あまり子孫を残していない遺伝子を持っている個体とのペアリングを進め、多様性を維持するように努めています」としている。




