なぜ顔も知らない相手に「ダマされた」のか

 偶然かそれとも……。いや、もうどうでもよかった。彼女は、私の人生そのものを肯定してくれている。そう信じたかった。

 そして彼女は私に、友人を騙すための台本を授けた。「家のリフォーム」「書籍の出版費用」。私の立場を使えば、誰も疑わないだろう。実によくできた筋書きだった。

「投資の話は絶対にしないでください」

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 この一文が、私にとどめを刺した。私は完全な共犯者になった。まともな意見をくれるであろう友人を遠ざけ、画面の向こうの見えない女と秘密を共有する。そうすることで、私は社会から切り離され、彼女だけが支配する小さな世界に閉じ込められた。

 書斎に並んだ法学書が、声もなく私を責めているように見えた。「お前は、どちら側にいるのだ」と。だが、その声はもう届かない。私はスマートフォンの電話帳を開き、友人の名前を探していた。金を借りるための嘘の口実を、頭の中で組み立てながら。

 その時の私の指は、もう震えてはいなかった。覚悟を決めたからではない。感覚が麻痺していたのだ。