「ヤンキー市場」に見えた限界
かつてドンキは、24時間営業の店舗で「深夜帯にヤンキーがたむろしていて怖い」などと言われていた時期もあった。ヤンキーたちからすると、深夜に集まっても開いている店が少ないのでドンキの売場で暇つぶしをしていたのだろう。
こうした深夜需要に対して、売場に商品をうずたかく積み上げて、宝探しの感覚で暇つぶしができる「魔境」というエンタメ空間を作り上げた。これによって、ヤンキーだけでなく買い物に暇つぶしやエンタメ性を求めている一部消費者の高い支持を得た。その結果、唯一無二のチェーンとしてドンキは成長できたのだ。
ただ、「魔境」はあくまで宝探しのような体験を楽しむ空間であるため、時間のある人にはいいが、昨今の消費者のうち大半を占めている「忙しい人」には向いていない。日々の買物を短時間で効率的に済ませたい「タイパ重視」の消費者にとって、ドンキはわざわざ選ばない店、ということだ。
そう考えると、ドンキのリピート顧客層は市場全体の一定割合、今だと2~3割くらいを超えないのではないか。もちろんPPIHもそんなことは十分把握しているはずだ。そもそもドンキは、店舗網を全国に薄く広く配置して、地域シェアが偏らないように展開している。
次の図は、都道府県別の大規模小売店販売におけるドンキのディスカウントストア事業のシェアを示したものだが、あまり偏りなく配置されていることが見てとれるだろう。
ドンキはこれまでも「スーパーみたいでスーパーじゃない」ことを意識しながら各地できっちり棲み分けて成長してきた、実に賢い会社だということがわかる。ただ、全国展開が完了し、ヤンキーを含む各地の「暇な人市場」を取りきってしまえばフロンティアは消失する。全国各地で1割以上のシェアを実現しつつあるドンキの成長の限界点は、既に予想されたことだった。
