「見張られてんねん」

「私、見張られてんねん」

「誰に?」

「このマンションを仕切っている怖い人。私の部屋にも監視カメラが付けられているし、体にはGPSが埋め込まれている。だから、今まで逃げられなかったのよ」

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 成瀬は脅すのも忘れて女性の話に聞き入った。

「このままじゃ、あなたも捕まってしまうわ。手足をちょん切られて海外の見世物小屋に売り飛ばされるか、治外法権の海の上で殺されてサメの餌よ。だから、一緒に逃げましょう」

 女性は成瀬の手を引っ張って、「こっちに非常階段があるから」と言って、下の階に向かって走り始めた。

「ちょっと待ってくれ……」

「何?」

「いや……、オレ、他に行かなアカンとこがあるから」

「だったら、私も一緒に連れて行ってよ!」

 途中で立ち止まった4Fの踊り場で、女性はいきなり成瀬のマスクをずらし、おもむろにキスしてきた。そのときに酒臭い匂いがしたので、酔っ払っているのかとも思ったが、誰か人が来たらヤバイ。成瀬は混乱してまったく性的興奮を覚えなかった。