さすがにケバブではない。が、カオマンガイであれば地球最期の日を心晴れやかに迎えることができるらしい。彼の感性はやはり私の理解をはるかに超えている。これまでいろいろな人と「最後の晩餐」について話してきたけれど、カオマンガイで地球の最期を見届けようとする人は誰もいなかった。よりによって、私の隣にいたとは。

写真はイメージ ©momomi/イメージマート

日本食でなくても「米と汁」があれば

「地球最期の日はお米を食べて締めくくりたいけど、別にうるち米じゃなくてもいい。それがタイ米でもジャスミン米でも、幸せな気持ちで地球の最期を見届けられるよ」

 その言葉を聞いて、初めてアメリカへ行ったときのことを思い出した。 高価な上に喉が渇くような強い塩気の食事が続く現地で、私の胃腸はすぐに悲鳴を上げた。探せば日本人の口に合う日本食はあるけれど、それは高級なハレの日の食事。たいていは、「本当の日本食」を知っている私の口にはイマイチ合わないものばかり。

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「せっかく高いお金を払うなら、確実においしいものを……」。そう考えたとき、現地のアジア系移民の方々が営む本格的な、けれど気取らないアジア料理は最もハズレのない選択肢になる。アジアの料理には温かい汁物があり、醬油や魚醬のうま味があり、何より米を中心とする日本と通じる食文化がある。たとえ粘りのないタイ米であっても、その温かい米をひと口食べれば、異国の地で気づかぬ間に強張っていた心身が、すっと楽になった。

 日本食という慣れ親しんだ形式にこだわらなくても、米を食べ、汁を飲めば胃は落ち着く。きっと彼も、そうして異国の地で自分の心身を立て直してきたのだろう。

 日本人である前に、一人のアジア人である。  

 彼はアメリカ大陸へ渡るたびに、その素朴な事実を胃袋から痛感するらしい。

 ちなみに私は、出国前の食事はやっぱり寿司がいい。

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長谷川 あかり

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次の記事に続く 「すき焼きの後はオレンジで口内をリセット」小学生の長谷川あかりがスーパーの店頭で実践していた“試食フルコース”

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