特に好きだった『コサキンDEワァオ!』

 特に好きだった番組のひとつが『コサキンDEワァオ!』(TBSラジオ)だ。「自分の人格形成に関わってるんじゃないかってくらい好き」(『働く男』)だという。パーソナリティは、「ラビー」こと関根勤と「ムックン」こと小堺一機。2人がラジオを任されたのは、まだ20代だった1981年から。帯番組『夜はともだち』でパーソナリティを務めていた松宮一彦が木曜日だけ『ザ・ベストテン』(TBS)に「追っかけマン(中継レポーター)」として出演することになったため、“代打”を任されたのだ。松宮が担当する他の曜日は、200枚以上のハガキが来るのに、木曜日だけはたった2枚。ある週、3枚に増えたと思ったら、同じリスナーが2枚書いてくれていただけだった。「そのリスナーの名前は一生忘れない」と関根は述懐する(ニッポン放送『大谷ノブ彦キキマス!』2014年8月27日)。

「頂いた仕事だから自分から辞めたいとは言えない。でもTBSに来るのがツラい。だったら手は一個しかない。ムチャクチャな放送してクビになろうって」(同)

 そこからコサキンのムチャクチャなスタイルが始まったのだ。

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「コサキン」小堺一機と関根勤 ©時事通信社

「意味ねぇ~」「くだらねえ~」「バカでえ~」

 2人がそう笑い合う通りのバカバカしくナンセンスな放送は人気を呼び、番組タイトルや放送時間を変えながら継続していった。『コサキンDEワァオ!』となったのは、1994年からだ。

 星野源は、中学3年から高校の3年間、それをカセットテープに毎週録音して、通学のときに聴いていた。自宅から通っていた自由の森学園までの道のりは、2時間ほどかかる。ちょうど1回分が聴けるのだ。行き/帰りに一度ずつじっくり聴いていた。

「最初聴いたときはこの2人は何を喋ってるのだろう、全然分からなくて」と星野が回想すれば、関根は「ひどいラジオだったでしょう?」と笑う(日本テレビ『ZIP!』2016年9月29日)。頻出するネタや固有名詞は何の注釈もなく語られるし、誰だかわからない人たちが普通に喋っている(聴いていくうちにそれが元は常連ハガキ職人だった構成作家たちだとわかる)。そもそも2人も「ラビー」「ムックン」と呼び合っているから、一聴しただけでは、テレビで見る関根勤や小堺一機だと一致しない。